趣味・レジャー

ゲームを愛した「生涯現役の巨匠」 すぎやまこういち氏死去 

 今夏の東京五輪開会式。入場行進で高らかに鳴り響いた「ドラゴンクエスト」の曲が耳に残っている人は多いだろう。「亜麻色の髪の乙女」に「恋のフーガ」、そして競馬のファンファーレ…。9月30日に亡くなった作曲家、すぎやまこういち氏が手掛けた作品の多くは、イントロだけで曲名がすぐに浮かぶ。近年では「ゲーム音楽の巨匠」という印象が強いが、まぎれもなく現代日本を代表する作曲家の一人だった。

 東京・下谷に生まれ、家族全員が音楽好きという音楽一家で育った。昭和40年代、西洋のクラシック音楽の要素をいち早くポップスに取り入れ、当時の音楽界に衝撃を与えた。CMやアニメ、特撮などの分野で多彩な音楽を制作。手掛けた曲数は数千にのぼる。

 ドラクエの音楽を手掛けるようになったのは50代半ば。将棋のテレビゲームの感想を制作会社に送ったことがきっかけで、61年に発売された第1作の音楽を担当することになった。同作はシリーズを重ねるごとにファンを増やし、日本を代表するゲームに成長。自身も30年以上にわたりドラクエの音楽を手掛け、かつては低く見られていたゲーム音楽の地位を高めることに貢献した。

 平成28年にインタビューした際には、心がけているのは「聴き減り」のしない曲を作ることだと語っていた。「ゲーム音楽は同じ曲を繰り返し、長時間聴くことになる。地味でもいいから、何回聴いても飽きない曲でないといけない」

 プライベートでも大のゲーム好き。戦時中は空襲のさなかでも、光を外に漏らさないようにして家族と花札やトランプに興じた。大人になってからは古今東西の約300種類のゲームを収集。ドラクエでは登場キャラクター全員を最大レベルまで上げ、80代になってからも携帯用ゲーム機などでゲームを楽しんでいた。

 「日本ほどいい国はないと思うし、日本に生まれてよかった」。インタビューの際、何度も口にしていたのが、母国に対する熱い思いだ。そうした思いを胸に“もの言う作曲家”としての活動にも取り組み、長年にわたって憲法改正や一票の格差問題の是正などを訴え続けた。

 「ドラクエは僕のライフワーク。作曲家として生涯現役で頑張りたい」。この言葉の通り、平成29年発売の「ドラクエXI(11)」でも作曲を担当するなど、精力的な作曲活動を全うした。心に響く美しいメロディーは、今後も人々の心に残り続ける。(本間英士)

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング