大変革期のモビリティ業界を読む

生まれ変わりつつある自動車教習所 免許返納の高齢者に“電動ミニカー”販売も

楠田悦子
楠田悦子

 南福岡自動車学校は10月12日より、高齢者を対象にクルマに代わる移動手段の販売を、教習所が強みとする安全運転の指導とセットで開始すると発表した。筆者が知る限りでは、全国に先駆けた取組みだ。

 “ドライバー卒業”後もサポート

 この事業の担当者である同自動車学校教育部の高野優樹氏によると、毎年約5000人の高齢者講習(70歳以上の免許証の更新をする方が対象)を実施しており、クルマの運転が危険な高齢者もいる。しかし、公共交通が使える地域ではなく、いきなり最高速度6キロで走行するシニアカー(ハンドル形車いす)に乗るわけにはいかない。クルマが無いと生活ができなくなる人ばかり。だが、高齢者の移動の目的は、徒歩20分以内の距離にあるスーパー、コンビニ、病院などが大半で、買物袋などの荷物を載せることができればクルマである必要はない。いろいろな移動手段を提案していきたいが、まず電動3輪ミニカーと電動ミニカー4輪を販売することになったという。

 同校がクルマに代わる移動手段の選定基準として大切にした点は、安全に走行できる最高速度に設定できること、購入できる価格であること、生活の用が足せる積載があること、新たな工事をせずに自宅で充電できる電動であること、今持っている免許証で乗れることだ。

 販売する電動3輪ミニカー/4輪ミニカーは、アクセスが製造する3輪タイプの「シルド」シリーズだ。3輪タイプは、屋根なしの「シルド」、屋根付きの「シルドルーフ(屋根付)」の2種類。4輪タイプも屋根なしの「シルドLX4W」と屋根付きの「シルドLX4W ルーフ(屋根付)」の4つのモデルだ。

 4種類とも、最高速度は時速15キロの低速モード、または時速20キロの高速モードがあり、バック(後進)時は時速7キロに制限されている。速度が出ないので本人や家族も安心できる。満充電にかかる電気代は約20円で、航続距離40キロなので買い物や病院には十分だ。ミニカー登録であるため、普通自動車免許で運転でき、市町村に届け出するだけで、簡単にナンバーが取得できる(自賠責保険の加入が必要)。車検・車庫証明・ヘルメットの必要がない。

 地方都市では、クルマの免許返納後の移動手段を見つけることができた高齢者やその家族は非常に少なく、不自由を強いられている。南福岡自動車学校のように身近な教習所が、クルマのドライバー卒業後のサポートまでできるようになれば、一生涯移動に困らない暮らしが地方でも実現するのではないだろうか。

心豊かな暮らしと社会のための移動手段・サービスの高度化・多様化と環境を考える活動に取り組む。自動車新聞社のモビリティビジネス専門誌「LIGARE」創刊編集長を経て、2013年に独立。国土交通省のMaaS関連データ検討会、自転車の活用推進に向けた有識者会議、SIP第2期自動運転ピアレビュー委員会などの委員を歴任。編著に「移動貧困社会からの脱却:免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット」。

【大変革期のモビリティ業界を読む】はモビリティジャーナリストの楠田悦子さんがグローバルな視点で取材し、心豊かな暮らしと社会の実現を軸に価値観の変遷や生活者の潜在ニーズを発掘するコラムです。ビジネス戦略やサービス・技術、制度・政策などに役立つ情報を発信します。更新は原則第4月曜日。アーカイブはこちら

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