打ち上げは全高98mのロケット 新型の宇宙船2機種が人員を輸送
この宇宙ステーションのモジュールの打ち上げには、ブルーオリジン社の大型ロケット「ニューグレン」が使用される。液化メタンを燃料とする新型エンジン「BE-4」とともに開発が進められているが、そのスケジュールは少々遅延ぎみ。しかし、2022年の第4四半期までには初打ち上げが行われる予定だ。
この宇宙ステーションへの人員輸送には、ボーイング社の有人宇宙船「CST-100スターライナー」と、シエラ・スペース社の「ドリーム・チェイサー」が使用される。
ボーイング社のスターライナーは、NASAがISSへの人員輸送船を民間企業へ委託するための「商業乗員輸送開発計画」に合わせて開発がはじまった宇宙船で、2014年にはスペースXの「クルー・ドラゴン」とともにNASAに最終選定されている。しかし、2019年の無人テスト飛行でISSへのドッキングに失敗。今年8月に予定していたテストもバルブの不都合のために延期され、現在ではその開発スケジュールが大幅に遅延した状態にある。次の無人テストは2022年前半、初の有人テスト飛行は同年後半が予定されている。
もう一方のシエラ・スペース社は、軍需企業としても知られるシエラ・ネバダ社の子会社で、宇宙開発事業を専門としている。同社が開発を進める「ドリーム・チェイサー」は、小型スペースシャトルのような形状をした再利用型の有人・補給宇宙船で、すでに大気圏内での滑空テストなどは行っているが、初の打ち上げテストは2022年7月に予定されている。ちなみにこのドリーム・チェイサーは、先述したNASAの選定において、最終選考でクルー・ドラゴンとスターライナーに負けた第三の機体でもある。
ISSのために開発がはじまった宇宙船「スターライナー」「ドリーム・チェイサー」は、現段階においてはともに開発が遅延しているが、今回建設が発表された宇宙ステーション「オービタル・リーフ」計画によって、新たな使用用途が見いだされ、あらためて注目を浴びることになるだろう。
また、このオービタル・リーフで活用すべく、一人乗り小型宇宙船の開発も進められている。ジェネシス・エンジニアリング・ソリューションズ社のこの超小型有人宇宙船は、ステーションにおける日常業務や観光旅行用の機材として使用することを想定している。
ベゾスに先行する2つの民間宇宙ステーション
▼ロッキード・マーティンなどによる「スターラブ」
ブルーオリジン社によるオービタル・リーフの発表のわずか3日前、もう1機の民間宇宙ステーションの打ち上げ計画が発表されている。ボイジャー・スペース社、その傘下にあるナノラックス社、そしてロッキード・マーティン社の在米3社が計画する「スターラブ(Starlab)」だ。
スターラブの製造を担当するのは主にロッキード・マーティン社で、宇宙空間で膨張させる居住区と、金属製の結合モジュール、推進区画、大型ロボットアームなどからなる。与圧区間の容積は340m3、ISSの3分の1ほどにもなる。定員は4名。比較的大きなステーションではあるが、一体構造のため一度の打ち上げで軌道上に乗せることができる。2027年に運用を開始する予定だ。
▼ISSスペシャリストによる「アクシオム・ステーション」
すでに「アクシオム・ステーション(Axiom Station)」の建設を公表している米ベンチャー企業アクシオム・スペース社は、2024年後半に最初のモジュール「アクシオム・ハブ・ワン」を打ち上げ、ISSにドッキングさせる計画を進めている。同社のウェブサイト では、すでにそのカウントダウンが表示されている。
このステーションは複数のモジュールを個別に打ち上げて増設されていくが、2028年前後にISSが投棄されたあとは単独で軌道上に留まり運用される。このプロジェクトが予定通りに進めば、史上初の商用宇宙ステーションとなる。
同社の創業者でありCEOのマイケル・サフレディーニ氏は、かつてはISSのプログラム・マネージャーを務めていた人物。また副社長のマイケル・ロペス・アレグリア氏は元NASAの宇宙飛行士であり、ISSに4回滞在し、その司令官も務めた経験がある。両者ともISSを知り尽くしたスペシャリストだ。
ちなみに2022年2月21日には同社が企画した「AX-1」ミッションによって、アレグリア氏と他3名のビリオネアが宇宙船クルー・ドラゴンに搭乗し、民間の宇宙飛行参加者としてISSに赴く予定だ。
なぜいま民間宇宙ステーションの建設ラッシュが?
今年3月23日、NASAは「コマーシャルLEOデスティネーション(Commercial LEO Destination)」(CLD)プロジェクトを発表した。「コマーシャル」とは商業利用、「LEO」とは地球を周回する低軌道を意味する。また、「デスティネーション」は直訳すると「目的地」「港」になるが、つまりはCLDとは、「低軌道を周回する宇宙港たる民間宇宙ステーション」を意味している。