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東日本大震災とSNS(下) 「e-じゃん掛川」 住民が情報発信

 東日本大震災の前から、災害時の備えの一環として、SNSを取り入れている自治体がある。静岡県掛川市だ。

 掛川市では2006年に「e-じゃん掛川」というサイトを立ち上げた。地域住民が必要とする情報を効果的に発信し、街づくりに役立てることが目的だった。登録すれば、自ら情報発信をすることもできる。画面を開くと、地域のイベントや学校の給食の献立、さらには不審者情報まで、幅広いジャンルの情報が紹介されている。

 災害時にこのサイトは「災害モード」に切り替わる。トップページ左上に「災害情報配信中」の文字が表示され、「災害コミュニティ」というページで、利用者自らが危険箇所などの情報を発信できるようになる。

 危険箇所、不足物資…

 「8時45分 大阪付近 信号機停止。通行注意」

 「9時7分 城北町2丁目で震災による火災が3箇所発生」

 昨年(2013年)12月1日に行われた地域防災訓練でも、市内各地の被害を想定した175件の情報が発信された。

 訓練での「e-じゃん掛川」の利用について、訓練後の市のホームページには、「SNSがこのように利用されることは、防災時の情報提供に非常に有効」や「良いことだと思う。多くの人に参加してもらえることを期待します」などのコメントが寄せられた。

 掛川市IT政策課の鈴木健二情報化推進係主任は、発生が予想されている南海トラフ地震の備えとして、「発生直後の情報だけでなく、長い避難生活の中で、救援物資の不足などの情報も発信できる役割もある」と、さらなるSNSの有効性を期待している。

 実際、東日本大震災後には「e-じゃん掛川」のユーザーが呼びかけあって、ノートやペン、消しゴムなどの文房具を届けようという全国的な取り組みに参加したこともあった。

 課題は認知度UP

 一方で、課題もある。掛川市の人口は2013年10月末現在で11万8240人だが、「e-じゃん掛川」の登録者数は3497人にとどまっている。日頃から積極的に利用しているユーザーはさらに少ない。市の担当者は、広報誌に掲載したり、説明会やパソコン教室で参加を呼びかけたりする広報活動を行っているが、より多くの住民に知ってもらうことが欠かせない。

 私たちは、掛川市で「e-じゃん掛川」の利用状況について取材した。その結果、「知っているけど使ったことはない」や「登録しているが利用はしていない」といった声が数人確認できただけだった。

 20代の女性は「そんな取り組みがあったなんて知りませんでした」と話した。50代の男性は「今ですらほとんど活用していないから、実際に震災が来た時に使うことはないだろうね。これから地域の人にもっと知ってもらわないと役立たないのでは」と指摘した。

 地域住民の情報共有のツールとしての有効性は高いだけに、認知度を高め、参加者を増やしていくことが課題といえそうだ。(今週のリポーター:神田外語大 有志学生記者/SANKEI EXPRESS

 【編集後記】

 技術やサービス進化 新たな可能性に期待

 東日本大震災に被災した神田外語大学の学生への取材を通じて、SNSが災害時の安否確認に大きな威力を発揮すると同時に、家族や友人を安心させ、不安を和らげる効果を持つことが分かった。SNSは震災時からさらに普及し、技術やサービスも進化しており、その威力はますます高まっていくと実感した。

 また取材に訪れた日本一のお茶の産地でもある静岡県掛川市の市役所は、全面ガラス張りで広々としていて、風車をイメージした空調機やお茶畑をイメージした階層が印象的だった。先進的に災害時の備えとしてSNSを取り入れてきた掛川市から、ITを活用したどんな新たな取り組みが打ち出されるのか。大きな期待と可能性を感じた。

 <取材・記事・写真>

神田外語大 有志学生記者

石崎綾奈(3年)、大橋和馬(3年)、梅津美沙貴(3年)、神立愛未(3年)

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