眠れない夜に消された魔女の肖像 長塚圭史
更新Hの部屋の白いアンティークのクローゼットの扉には本当に魔女がいたのかどうか。時々思い出す。塗りつぶした部分を指で撫ぜてみると、確かにそこに何者かが描かれていたような凹凸はあった。しかし魔女というのはどうなんだ。そんな恐ろしいものをクローゼットの扉に描くなんていうことが有り得るのだろうか。まして子供部屋に置くなんてことが。しかも取り替えずに塗りつぶすなんて。塗装された魔女の存在感は、寧ろ増大するのではなかろうか。大変興味深いところである。
ところで最近は、天井の木目や土壁から怪しい輪郭が浮かび上がってくるなんてことがあると反って心躍るのである。そのまま目の焦点をずらして、手を差し伸ばせば(ホラー漫画の)諸星大二郎の世界よろしく異界へ入り込めるのではないかと、少年時代の私なら目を剥いて驚くような好奇心が現在の私にはあるのである。(演出家 長塚圭史、写真も/SANKEI EXPRESS)
