実際に乗り込んでアクセルを踏み込むと、もともとリーフが武器としていたモーターならではの鋭い加速力を遥かにしのぐダイナミックな立ち上がりに驚かされる。先述のように、動力源となるモーターはノーマル仕様のリーフと同一のものだ。よって最高出力も最大トルクも全く同じなのだが、VCMを専用チューニングすることで、アクセルを踏んだ時の瞬間的なレスポンスと伸びやかな加速力を大幅に向上させているのだ。とくに、最大のレスポンスと加速度を発揮する「Bレンジ」を選択したときの走りは、体に電気がビリッと走るように刺激的。高性能スポーツカーのように体が背もたれにピタッと吸い付き、頭もGの影響で一瞬クラっときてしまうほどだ。VCMのプログラミングを調節するだけで、レスポンスの鋭さが現行型リーフの2倍にもなるというから驚きだ。
便利なeペダルも搭載
「Bレンジ」を選択中は減速力も強力に増す。NISMOにもアクセルペダル一本で加速・減速を操作できる「eペダル」を搭載しているのだが、ペダルを踏む力を緩めた途端にグーっと強い制動力を発揮する。減速GもNISMO用に強めているのだ。加速も減速もペダル操作に対する反応がすこぶる速いので、ドライバーの要求を瞬時に実行する気持ちよさと、メリハリの効いた俊敏な走りを楽しむことができる。バッテリー残量が少ないときなど航続距離を伸ばしたいときは、エコモードを使えば加速がマイルドになり、ブレーキング時の回生エネルギーも増強する。「スポーティーだけど電費も激しいBレンジで走りすぎてしまった…」なんてときは、エコモードでパワーセーブすれば電欠の心配も減るだろう。
NISMOは専用の車速感応式ステアリングとショックアブソーバー(=ダンパー)も搭載している。車速が上がると軽めだったハンドルが引き締まり、より手応えのある操舵感が得られると同時に、狙ったラインを外さない高い応答性も披露する。とはいえ、ガチガチに作り込んでいるわけではないので、誰にでも扱いやすい。18インチの大径ホイールを履かせた足回りに関しては、専用サスペンションで減衰力を強めている影響もあり、路面の様子が足や腕にダイレクトに伝わってくる。これだけロードインフォメーションの入力があるとサーフェスを把握しやすいので、スポーツ走行をしていて安心感がある。逆に言えば乗り心地や静粛性がやや犠牲となっているのだが、所詮そこまで気にならないレベルだし、スポーツマインドを刺激するNISMO仕様なら、むしろこういった味付けのほうがドライバーの感覚やニーズとマッチしそうだ。
内外装にもNISMOらしさ満載
鮮やかなレッドのラインが目を引く専用の空力パーツは、ひと目でNISMOだと分かるアイデンティティーとしての役割だけでなく、ダウンフォースの発生や整流効果による直進安定性やコーナリング性能の向上など、しっかりとエアロダイナミクスにも貢献している。実際に高速でカーブを駆け抜けても、車体が路面に吸い付きピタリと安定していた。