近年、さまざまな機器をネットでつなげるIoT(インターネット・オブ・シングス)やビッグデータ、人工知能、ロボットなどの技術革新が生産性の向上や新たな製品・サービスの提供につながることが期待されている。既に欧米では、自動車の完全自動走行やドローンによる宅配に向けた実証実験も進められているほか、民泊やライドシェアなどのシェアリングサービス、フィンテックと呼ばれる新たな金融サービスが登場している。
また、こうした次世代技術は、自然災害の予測や災害の観測、テロ対策といった国民の安全にかかわる課題や、健康・医療サービス、育児・家事支援サービスなどの国民生活の向上、資源・エネルギーの利活用の効率化をはじめ、国家的な課題の解決にも資するものだ。
◆イノベーションを阻害
しかしながら、既存の規制・制度はこのような最新の技術革新を想定しておらず、民間の創意工夫によるイノベーション創出を阻害している側面もある。新たな技術により産業や社会のあり方が大きく変わる可能性がある中、わが国の将来におけるあるべき姿を見据えたうえで、新しい時代に相応しい規制・制度を再構築する必要がある。
政府においては、昨年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」の中で、次世代技術による産業構造・就業構造の変革の検討に着手することが示された。同11月開催の「未来投資に向けた官民対話」でも、2020年に無人自動走行による移動サービスを実現するため、必要な環境整備に取り組むことを安倍首相が表明した。また、身近な例としては、ドローンについて、航空法が改正され、新たに「無人航空機」と位置付けることで、飛行する空域や飛行の方法といった基本的な交通ルールが定められている。
