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【飛び立つミャンマー】スーチー氏へのねじれた愛情、ロヒンギャへのナショナリズム問題

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【飛び立つミャンマー】スーチー氏へのねじれた愛情、ロヒンギャへのナショナリズム問題

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 憲法上の制約のため、軍と警察と国境問題に関する事項に指揮権を持てない彼女は、それでもシビリアン・コントロール(文民統制)の及ぶ範囲を最大限に活用して、昨年8月、コフィ・アナン元国連事務総長を委員長に据えた第三者委員会を設置し、ロヒンギャ問題解決に向けた調査にあたらせた。1年間の調査を経て、今年8月24日に委員会の答申が出され、ロヒンギャの国内移動の自由の保障と、国籍付与に向けた指針が示された。

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 答申は従来のアウンサンスーチー氏の考え方と一致する。彼女はこの答申を活用して、問題の解決に向けた取り組みを具体化させようと決意した。しかし、答申が出された直後、アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)を自称する武装集団による襲撃がはじまり、それに対する軍の過剰な封じ込めが発生、多大な被害を受けた一般ロヒンギャ住民が大挙して国境を越え隣国バングラデシュへと脱出した。

 世論も軍と同じ見解

 ミャンマー政府軍(国軍)の態度は明確で、「ロヒンギャなる民族は存在しない。彼らはバングラデシュからの不法移民集団だ。テロリズムまで起こし、もはや出て行ってもらうしかない」というのが本音である。

 一方、ミャンマーの国内世論も、ロヒンギャ問題についてだけは軍と同じ見解に立っている。国民の多くは長く続いた軍政期へのネガティブな記憶から、政治や経済への国軍の関与を極度に嫌い、2015年11月の総選挙でアウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)を圧勝させた。だが、ロヒンギャ問題については、軍と全く同じ見方をしているのである。

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