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長期・分散投資で豊かな老後を 本紙創刊85周年記念資産運用セミナー

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長期・分散投資で豊かな老後を 本紙創刊85周年記念資産運用セミナー

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 フジサンケイビジネスアイは、創刊85周年を記念した資産運用セミナー「人生100年時代における資産形成」を9月15日に東京都中央区の東京証券会館、22日は大阪市北区のグランフロント大阪で開催した。元衆議院議員で個人投資家としても知られる杉村太蔵氏が基調講演を行い、豊かな老後を過ごすための資産形成の考え方、投資先の成長性を見極める視点などをわかりやすく説明した。また、特別協賛した藍澤證券からは市場調査や商品情報の専門家が登壇し、各国株式市場の見通し、積立投資の魅力について講演した。両会場で300人を超える参加者が来場し、メモを取るなど真剣な面持ちで講演に聞き入っていた。

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 ≪基調講演≫

 □杉村太蔵氏

 ■人生100年時代における資産形成

 ◆老後を乗り切る投資の極意は「愛と勇気と少しの知識」

 「ライフ・シフト」という本が大変話題になった。ロンドン・ビジネススクールの教授で人材論・組織論の権威、リンダ・グラットン氏らの著書で、長寿命化がもたらす社会や人生選択の変化を予測したものだ。それによると医療技術の進歩などで、2007年に生まれた人の半分は100歳まで生きるという。

 今、日本では100歳以上の人が7万人弱おり、48年連続過去最高を更新している。そのうち9割が女性だ。長生きは大変結構なことだが、年金やその他社会保障制度の点で多くの問題があるのも事実だ。

 日本の年金制度は昭和34年、岸信介内閣で作られた国民年金法に基づいている。当時の平均寿命は65~66歳で、定年後5年程度で受給者が死亡する計算で作られている。当時の名だたるエリートが知恵を絞った制度だが、人生100年時代など想定外だろう。政府は2月、高齢社会対策大綱をまとめ、収入の有無などを考慮し、支給額の割増しとセットで年金受給開始時期を70歳以降に遅らせるなど、選択肢を広げる改革案を検討しているが、このままでは制度を維持するのが難しい状況だ。

 65歳で退職した場合の老後資金は2~3000万円必要とされ、現状のままなら預貯金の取り崩しと年金で何とか“ゴール”が切れる。しかし、人生100年になると4~6000万円必要となり、とても足りない。早い段階から計画的に資産形成に乗り出す必要があるのはこのためだ。

 私自身、投資と投機は違うと考えている。短期的な市場変動に期待した売買は“投機”だ。いつまでも買えない、売れない状況にもなりやすい。これに対し、企業の経営方針や商品性、経営者の質などを精査し、見極めたうえで銘柄を選定し、長いスパンで運用するのが“投資”だ。難しいことはない。投資先への愛とリスクを取る勇気、少しの知識があれば、豊かな老後のための資産形成が十分可能になるはずだ。

 投資銘柄を選ぶとき、私は「10年後にこの商品、企業はどんな形で残っているか」を想像するようにしている。時には商品を実際に使用・比較し、投資判断に役立てる場合もある。ホームページにある社長の経営方針が分かりやすいかどうかもポイントだ。自分が理解できないものには投資しないことも、自分のルールとしている。投資家は企業の応援団であるべきだと信じている。

 分散投資も不可欠だが、売買銘柄を増やすだけでなく、時間軸を分散する手法を推奨したい。毎月一定額でコツコツ買い、配当も含めた複利運用を長期で行う手法だ。投資先への愛とリスクをとる勇気、少しの知識があれば、投資による資産形成は十分可能だ。銘柄選定に自信がなければ証券会社の販売する投資信託やファンドラップなどを利用するのもいいだろう。人生100年時代では「何も行動を起こさないリスク」があることを忘れてはいけない。

                  

 ≪講演1≫

 □藍澤證券 谷健一郎市場情報部長

 ■各国株式市場の見通し

 ◆不協和音の中に見出す投資のカギ、AI関連銘柄に注目

 米国株式市場は、2016年11月のトランプ大統領当選以降、技術革新や好調な企業業績を背景に上昇。17年12月の税制改正も支えとなり上昇傾向が一時強まったが、18年2月以降の相場は大きく振れた。

 相場変動を生み出す不協和音は、米中の貿易摩擦に起因する。トランプ大統領は、対中貿易赤字(2017年)が約40兆円と、赤字全体の47%を占めていることを問題視し、制裁的な関税引き上げを打ち出している。現状では中国側に譲歩する姿勢が見られるが、情勢は流動的だ。

 知的財産保護が米中間の重要課題で、米国はハイテク技術の中国への流出を強く警戒している。最重要視されているのが人工知能(AI)。世界の覇権を争う両国は軍事にも関わる技術競争の最中にある。

 世界中でAIの開発競争が加速するが、汎用的な技術でもあり具体的な銘柄を絞り込むのは意外に難しい。今後、AI関連銘柄としてクローズアップされるのはフェイスブック、グーグル、アマゾン、マイクロソフトなど、ビッグデータを扱う企業だ。個人情報を含め膨大な情報を収集分析可能で、年齢、性別ごとの購買傾向などを高精度で推測でき、新しいビジネスモデルを次々と提案している。中国ではアリババも注目株だ。

 米中が衝突するなか、台湾の存在感が増しているのは同社の存在も大きいだろう。半導体の受託製造で世界シェアトップの台湾セミコンダクターだ。同社の技術力の高さはチップの微細化を進める。AI開発には欠かせない技術だ。日本ではソフトバンクグループ。AI革命をにらんだ10兆円ファンドを立ち上げ話題を集めた。成長する新興国も投資妙味が高い。なかでもベトナムの生損保大手、バオ・ベト・ホールディングスなどは注目である。

                  

 ≪講演2≫

 □藍澤證券 営業推進部 松井亮介推進課長

 ■積立投資の魅力

 ◆老後資金、必要額は夫婦で4200万円以上

 厚生年金加入者の夫と専業主婦だった妻との二人暮らしの場合、受け取れる年金は夫15万円、妻6万5000円で毎月21万5000円となる。実際の生活費としては月に30万~35万円必要で、月5万~10万円の赤字を貯蓄から取り崩す必要がある。このため人生100年時代になると、夫婦で4200万~6300万円の蓄えが必要で、このほか入院費など生活費以外の予備資金でさらに1000万円程度の上積みが必要だ。

 当社で推奨するのは、毎月決まった額で株や投資信託の同じ商品をコツコツ購入していく長期的な積立投資だ。購入額が決まっているため高い時には少なく、安いときに多く買うことができる。強気相場で大量に買い、下落基調では買い控えるという通常の投資家行動の逆を行く手法だ。米国、日本、新興国市場で指数連動型商品を一定額買い続ける積立投資を行った場合、いずれの市場でも20年以上の運用で収支はプラスとなった。安全で効果的な資産形成といえるだろう。

 投資信託などを利用した分散投資、選定に自信がなければ、取りうるリスクに応じて証券会社に運用を一任するファンドラップの活用も有効だ。

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  • 杉村太蔵氏
  • 杉村太蔵氏は「成長性を見極め、長期投資で資産形成すべき」とアドバイスした
  • 藍澤證券谷健一郎市場情報部長
  • 藍澤證券営業推進部松井亮介推進課長

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