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【ASEAN見聞録】マレートラの生息地、中国の“猫”需要が脅かす

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【ASEAN見聞録】マレートラの生息地、中国の“猫”需要が脅かす

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 強烈な臭いと独特な味わいで「果物の王様」とも呼ばれるドリアン。東南アジアの華人らを中心に愛好されてきたが、中国で近年、高級志向とともに一大ブームとなっている。対中輸出の新たな主力産品にしようと、タイは農家に奨励策を展開。一方、マレーシアも中国への輸出拡大を狙い、政府主導で大規模なドリアン農園を造成する予定だが、開墾による森林伐採で、絶滅が危惧されるトラの生息地が脅かされる事態にも発展している。(吉村英輝)

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 「猫山王」ブーム

 「中国のお客さんが関心を示すのは、ムサン・キング(猫山王)ばかりです」

 マレーシア南部ジョホール州のなだらかな丘陵に広がる「忠誠ドリアン農園」を経営するハン・シンケン(韓新根)さん(42)には、2年ほど前から中国の顧客からも問い合わせの連絡が入り始めた。ただ、栽培しているドリアンの中で2割弱に過ぎない、猫山王の品種ばかりが注目されるという。

 猫山王とは、204種類登録されているドリアンの中でも、人気の高い主力12品種のひとつ。50年ほど前から流通しているが、爆発的に人気が出たのはついこの数年だ。

 きっかけを作ったのは、マカオの「カジノ王」で実業家、スタンレー・ホー氏とされる。2010年、統合型リゾート施設(IR)のマリーナベイ・サンズの開業式のため訪れたシンガポールで、この猫山王にほれ込んだ。臭いのため、ほとんどの航空会社は預かり荷物でもドリアンの持ち込みは禁止しているが、同氏はプライベートジェットで88個を持ち帰り、うち10個を香港の有名資産家である李嘉誠氏にプレゼントした。この逸話により、猫山王は、「グルメ」と「富」の象徴として中国人社会の中で注目を集めだしたという。

 国連資料では、中国が昨年輸入したドリアンは前年比15%増の約35万トンで、5億1000万ドル(約580億円)相当。中国では、ドリアンを鍋料理やピザにも入れる“愛好家”も出現しているが、実際に味わったことがある中国人は「まだ1%」とされ、需要増は確実視されている。

このニュースのフォト

  • 27日、マレーシアの「忠誠ドリアン農園」では、ドリアンの実がなり始めていた。来年1月ごろに食べ頃となるという
  • 27日、マレーシアの道路沿いにあるドリアン販売所で売られていた、中部パハン州産の猫山王。果肉を食べるとタネが残る
  • 27日、マレーシアの道路沿いにあるドリアン販売所では、12品種が表示されていた

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