専欄

米国といかに付き合うのか 2019年の中国を展望する

 中国にとって今年は、建国70年、天安門事件30年といった節目の年である。だが、昨年同様、米国といかに付き合うかという難題に頭を悩ませる1年になるだろう。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 中国が米国との外交関係を樹立したのは40年前の1979年1月で、その前月に改革開放が始まった。当時の指導者、トウ小平は、階級闘争優先から経済発展優先へと方針転換する上で、中国にとって最も重要な米国との関係を安定させることが不可欠だと考えたのである。つまり、改革開放の推進と安定した対米関係の確保は表裏一体の関係にあり、それは今も基本的に変わっていないと言えよう。

 皮肉なことに、米国との関係悪化は、改革開放40年の大きな成果がもたらしたものである。米国の指導者が「米国第一」を叫び、一超多強から多極化、あるいは米中2強への移行に待ったをかけようとしているのも、中国が改革開放によって総合国力を高め、米国に追い付こうとしているからである。

 先月、北京で改革開放40年を祝う大会が開かれ、習近平は記念演説で過去40年の発展を誇示し、改革開放を続けて、今世紀半ばに社会主義現代化強国を実現しようと呼びかけた。

 この習近平演説(約1万3000字)では、「強国」という文言は2回しか登場しない。2017年10月の第19回共産党大会における習近平の政治報告(約3万2000字)では、19回も登場していた。字数などの違いを考慮しても、習近平演説では、米国をいたずらに刺激しないよう、「強国」の文言を減らしたように思われる。

 また、10年前の08年12月に開かれた改革開放30年を祝う大会での胡錦濤の記念演説(約1万8000字)では、「政治体制改革」という文言が5回も登場しているが、習近平演説では1回に減っている。しかもそれは、これまで政治体制改革を実施してきたという文脈の中で使われており、今後、政治体制改革を進めるとした胡錦濤演説とは全く異なる。習近平政権下での天安門事件の見直しなどは論外だろう。

 現在、中国は総合国力においてまだまだ米国には及ばない。約30年かけて、今世紀半ばに米国に追い付き、追い越すというのが、中国の将来構想である。習近平政権には時間が必要であり、当面、一定の対米譲歩と国内引き締めで、対米関係悪化の難局を乗り切る方針とみられる。(敬称略)

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