海外情勢
認知症患者集めた街づくり オーストラリア、尊厳と自律性保つ生活支援
高齢者介護において早くから在宅ケアに重点を置き、認知症研究が盛んなオーストラリアで、認知症患者だけを集めた「街」をつくる計画が進んでいる。治療を前面に出さず、可能な限りそれまでと変わらない家庭的な生活を送れるよう支援するのがコンセプトだ。
部外者との交流も
街の建設を担う地域支援会社グレンビューによると、現在オーストラリアで認知症を患う人は約43万人。死因の2位を占め、患者は2058年までに100万人を超えるともされる。認知症はオーストラリア人にとって極めて身近な病気だ。
グレンビューの役員も務めるタスマニア大学ウィッキング認知症研究教育センターのジェームス・ビッカーズ教授は「認知症は今世紀最大の健康問題」とし、患者が尊厳と自律性を保ち生活することの重要性を訴える。
「コロンジー」と呼ばれる街はオーストラリアでも高齢化率が高い、南東部タスマニア島の最大都市ホバート近くの空き地に建設される。敷地面積は約2万5000平方メートルで、総工費は約2500万豪ドル(約19億円)。来年3月までの完成を目指している。
定員は約100人で、12軒の平屋住宅に価値観や趣味が近い8人ずつが分かれ、個室で暮らす。街にはレストランやカフェのほか、スーパーや映画館、図書館、美容院などが設けられる予定。居住者が生活に必要な全てを、街で済ますことができるようにし、スタッフがサポートする。