専欄

中国メディアの米国批判

 米中の貿易戦争は5月10日にワシントンでの11回目の閣僚級協議が物別れに終わった後、両国首脳の電話会談のほかには、解決に向けての目立った動きはない。この間、中国のメディアは厳しい米国批判を続けているが、最近は国内の「投降派」を批判する論評もみられる。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 交渉中断後の米国批判には、中国で最も権威のあるメディア、共産党機関紙「人民日報」も加わった。それまでは同紙の系列の国際情報紙「環球時報」が専ら米国批判役を務めていた。

 「人民日報」が加わったことで米国批判が本格化したわけだが、それは習近平政権が不合理な合意よりは合意のない方がましと判断し、「持久戦」を覚悟したことを印象付けた。

 中国の貿易戦争に対する基本的立場は、交渉による解決を求めるが、譲歩には限界があり、圧力には屈せず、原則的な問題では妥協しないというものである。その上で中国メディアは、中国経済には強靭(きょうじん)性、耐久力があり、リスク抵抗力もあると強調している。

 米国は自由貿易を中心とする経済のグローバル化という歴史の潮流に逆らい、ゼロサムの冷戦思考にとらわれており、核心的利益を擁護する中国の能力と決意を過小評価しているというのが米国批判の要点である。時間は中国の味方であり、中国は改革開放を深化し、人類運命共同体の構築を推進するとも述べている。

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