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「合意なき離脱」に現実味 欧州の協調体制後退も

 日本企業にとっても英国向け輸出には、EU向けとは異なる新たな手続きが必要となる。英国を含むEU域内で部品などのサプライチェーン(調達・供給網)を構築している場合、その見直しを早期に迫られよう。

 合意なき離脱に至った場合の英国を除く欧州経済や世界経済全体への負の影響は、さほど大きくならないと見込まれる。世界貿易に占める英国の割合は3%弱にとどまるほか、EU側では英国からの企業や人材の移転が期待できるためだ。

 ただし、英国の通商面をめぐる混乱がどの程度になるのか判然としない。金融市場の混乱や企業、消費者の心理悪化も懸念され、欧州を中心に景気下押し圧力が強まるリスクは否定できない。

 最後に、英国のEU離脱が欧州統合に及ぼす影響に触れておきたい。欧州は2度にわたる世界大戦の反省を踏まえ、多国間の協調体制を着実に強化してきた。英国の離脱は協調体制の大きな後退となるほか、結果として大国であるドイツやフランスの存在感が増し、南欧や中東欧諸国との摩擦が深まりかねない。

 元来、欧州の統合深化に慎重だった英国の離脱で、むしろEUの結束が強まるとの見方もある。いずれにしても、英国の離脱が欧州統合に及ぼす影響を評価するには、もう少し時間がかかるだろう。

【プロフィル】藤山光雄

 ふじやま・みつお 日本総合研究所主任研究員。1979年奈良市生まれ。神戸大経営学部卒。専門は米欧マクロ経済、エネルギー市場。

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