色丹島の実効支配強めるロシア プーチン氏、開発進め“汚名”返上
内容はともあれ、番組でのやりとりからは、露政府が色丹島への関与を強めるとのメッセージが伝わってくる。露政府は直後の5月、極東地域の土地を国民に無償分与する新法を成立させた。同法には、色丹島など北方領土も対象に含まれた。
さらに17年8月には、色丹島への経済特区設置を発表。第三国の企業進出を促す特区創設に日本政府は「共同経済活動に悪影響が及ぶ」として懸念を表明した。しかしこれを機に色丹島の開発は本格化し、18年3月には米キャタピラーがディーゼル発電所建設に参入した事実も明らかになった。
プーチン氏が祝意を表明したギドロストロイの水産加工場の建設にも、海外企業が全面的に関与している。アイスランドのプラントメーカー「スカギン 3X」で、同社はホームページでも建設計画や施設稼働式典の様子などを詳細に紹介している。同社のロシア事業部門幹部は取材に「ギドロストロイとの契約時に色丹島が領土問題を抱えているという事実を知らなかった。今回の稼働式典後に日本政府から抗議を受けたが、契約を破棄することは経営上、不可能だった」と打ち明けた。同幹部によれば、他にもアイスランド企業3社がプロジェクトに参画していたという。
現地報道によれば、新工場の建設には65億ルーブル(約100億円)が投じられ、1日当たり900トンの魚の加工が可能という。既存の施設と合わせ、500人が雇用されるといい、色丹島の全人口(2917人)の実に6人に1人がこの水産加工場で働くことになる。
色丹島での大型水産加工場の建設が北海道根室市などの漁業に影響を及ぼすかについて、北海道の行政関係者は「現時点では分からない」と答えた。同海域の水産資源量の実態が不透明で、工場がフル稼働するかも分からないためだ。ただギドロストロイ側は、「ロシアと中国での需要増に応える」としており、ロシア以外の第三国にも輸出する思惑があるもようだ。(産経新聞大阪経済部 黒川信雄)