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デジタル課税の新ルール 日本企業も困惑 17日からのG20で議論へ

 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が17、18日、米ワシントンで開かれる。主要議題のひとつになるのが、経済協力開発機構(OECD)がまとめたデジタル課税の新ルールの枠組み案だ。枠組み案は米IT大手アップルなど「GAFA」(ガーファ)と呼ばれる巨大IT企業を念頭に置いた課税強化が狙い。しかし対象となる業種など明確でない部分も多く、日本企業の間からも課税強化の網につかまりかねないとの困惑の声が上がっている。

 「税としてはシンプルすぎる作りだ」。ある経済界関係者は枠組み案を見て、こう評価した。

 枠組み案ではまず、対象企業の利益を「通常利益」「超過利益」に分ける。「売上高に占める営業利益率10%」で線引きし、それ以下を通常利益、超える部分を超過利益とする案が有力だ。

 次に、超過利益の一部をブランドといった無形資産から生じたとみなし、サービスなどが利用された「市場国」へ配分する。先進7カ国(G7)関係者からは、この配分される利益の割合も「10%とすべきだ」との意見が出ている。さらに国ごとの利益配分を売上高に応じ決める。

 だが、日本企業は当惑している。OECDは対象を「消費者向けビジネス」としているが、「たとえばキヤノンはデジタルカメラは対象となる可能性があるが、医療機器はどうなるのかといった問題がある」(経済界関係者)など、単純な区別は難しいからだ。

 さらに「利益率10%超」を超過利益とする有力案にも「GAFA(ガーファ)だけが対象じゃなかったのか」(製薬業界関係者)との不満の声が上がる。

 有力案では、利益率45%のフェイスブック、27%のアップルなど米IT大手だけでなく、19%のアステラス製薬など「日本の製薬企業はほとんどがつかまる可能性がある」(経済界関係者)からだ。また、OECDは利益率に関し、事業ごとになどに分け判断する可能性を示しており、企業は対応のためのシステム導入費用がかさむ恐れがある。

 一方、経済界は枠組み案に世界企業が各国に持つ販売子会社への課税強化も盛り込まれたことにも懸念を強める。市場国に一定額以上の課税を保障するため、販売子会社の利益率が低い場合でも“最低水準”の利益率があるとみなすルールがあるためだ。

 通常、自身で付加価値を生まない販売子会社の利益率は低い。しかし、この利益率を“最低水準”まで引き上げれば、「グループ全体の業績の整合性をとるため、世界企業の本社の利益率を下げなければならなくなる」(経済界関係者)。多くの主要な日本企業に「本社の業績悪化」という“被害”が出かねない。

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