高論卓説

中東で高まる露の影響力 プーチン氏、サウジと多分野で関係強化

 このほかロシアの直接投資基金(RDIF)が、サウジアラムコによる露石油設備企業、ノヴォメトの株式の30%取得や、サウジと露航空機リース事業との総額6億ドルの新取引を明らかにしたほか、ガスプロムのサウジ天然ガス事業への協力の可能性についても言及するなど、両国の協力関係が幅広い分野に拡大していることも明らかにしていた。

 ところで、サウジのハーリド・ビン・バンダル駐英大使は今月中旬、トランプ米大統領の米軍撤退表明後のトルコのシリア侵攻は突然の大惨事であったと述べた上で、ロシアとの関係強化に関する質問に対して極めて興味深いことに、ロシアはしばしば西側諸国より東方を理解していると答えていた。この回答には、「アラブの春」で窮地に立ったムバラク・エジプト政府を早々と見限った米国に対して、内戦で崩壊の危機に立ったシリアのアサド政権の存続を確かなものとしたロシアを再評価する響きが感じられる。そうであるとすれば、サウジをはじめとするこれまで親米とされてきたアラブ諸国が、今後ロシアとどのような関係を構築していくことになるのか注目される。

【プロフィル】畑中美樹

 はたなか・よしき 慶大経卒。富士銀行、中東経済研究所カイロ事務所長、国際経済研究所主席研究員、一般財団法人国際開発センターエネルギー・環境室長などを経て、現在、同室研究顧問。東京都出身。

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