日本と逆に消費税を廃止したマレーシア、早くも復活論
10月1日から10%に上がった消費税。税収が増えれば福祉や行政サービスが充実するという考え方もあるが、家計を圧迫するのは間違いない。日本が増税した一方、昨年、消費税の廃止に踏み切ったのがマレーシアだ。この廃止について、日本の一部にも「英断」と評価する声もある。だが、別の財源を探し出すことは容易ではなく、政府は対応に苦慮。既に「消費税復活論」が浮上する。
廃止でも「財源ある」
「GST(消費税)はすべての国民から支払われる。赤ちゃんにさえ課税される」
2017年11月、在野の立場にあったマレーシア元首相のマハティール氏(現首相)は、ブログにこんな投稿をした。当時のナジブ政権が15年に導入したGSTを痛烈に批判するものだ。
投稿の約半年後に行われた総選挙で、マハティール氏は野党連合「希望連盟」の首相候補として出馬。ナジブ政権の腐敗を追及すると同時に、GST廃止を公約に掲げ、勝利を収めた。
マハティール氏は18年5月に首相に就任すると、さっそくGSTの廃止を決定した。15年まで導入されていた売上・サービス税(SST)を修正し、9月から新税として復活させた。
新しいSSTは、製品の出荷時に製造者に課される売上税(5~10%)と、消費者が無形のサービスを利用した際に課されるサービス税(6%)を柱とする。GSTが消費活動すべてに適用されたのとは大きな違いだ。
たとえば、消費者が商店でモノを買う場合の税率は0%だが、ホテル宿泊や保険加入などのサービスを受ける場合は6%の税がかかることになる。国民に例外なく適用されるGSTよりも消費者の負担は軽くなるとされた。
心配された歳入の減少についても、マハティール氏は「GSTを廃止しても政府には十分な収入がある」として新税制への支持を呼びかけた。
撤廃でも支持率低迷
ところが、マハティール氏の自信とは裏腹に、政府が直面したのは想像を超える税収減だ。
政府は、GSTでは年間約440億リンギット(約1兆1200億円)だった税収が、SSTでは半分以下の約210億リンギットに減少すると試算した。その分、国民の負担は軽くなるが、政府にとって頭痛の種だ。政府はこの穴を埋めるため、政府系企業に狙いを定め、19年度は国有石油会社ペトロナスからの「特別配当」で対応することを明らかにした。