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福島の酒造業界、復興に全力 台風19号で酒蔵など浸水被害

 全国有数の酒どころ、福島県を襲った台風19号は、酒蔵や精米工場の浸水被害をもたらした。

 全国新酒鑑評会の都道府県別の金賞数で今年、7連覇を遂げた福島県では、県産日本酒が東京電力福島第1原発事故による風評被害の払拭の旗頭とみなされている。新酒の仕込みを迎える中、酒造関係者は影響を最小限に抑えようと懸命だ。

 「こんな被害は初めて。これまでと同じ味が出せるかどうか」。大天狗酒造(本宮市)の杜氏兼社長の伊藤滋敏氏は新酒に使うはずだった酒米約5トンを失い、頭を抱える。阿武隈川の近くにある酒蔵が床上浸水し、保管していた米を移そうとしたが間に合わなかった。

 酒造りは温度管理が大事で、仕込みの時期も味を左右する要素の1つ。10月14日に始める予定だった、仕込みは延期となったが、伊藤氏は「蔵人たちと力を合わせ乗り越えたい」と力を込める。

 笹の川酒造(郡山市)では、清酒の製造場所や貯蔵庫に泥が流れ込み、ポンプのモーターは水に漬かって使えなくなった。清掃や消毒を総掛かりで行い、復旧のめどが立ちつつある。山口哲蔵社長は「こんなことがあったからこそ、いいものを仕上げたい」と話す。

 県の酒造組合などによると、大多数の酒蔵が利用する郡山市の精米工場も浸水被害に遭った。ある酒造会社は「一部の新酒は仕込みが遅れた」と明かす。組合は影響を抑えようと、県外の工場に精米を依頼するなどの対策を進める。

 福島県は原発事故後の風評被害が消えない中、日本酒を「復興のトップリーダー」(内堀雅雄知事)と位置付け、県産の食品や農産品のイメージ向上につなげたい考え。県産品振興戦略課は「まずは台風による被害状況やその影響を正確に把握したい」としている。

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