災害対策予算の使途に警鐘 相次ぐ不備で検査院が指摘
会計検査院の2018年度決算検査報告では、災害対策の不備に対する言及が相次いだ。自然災害のたびに露呈するインフラの問題点を、税金の使われ方という観点から事前に指摘し、国に早急な対策を求めている。10月には2つの台風が、東日本に大きな被害をもたらしたばかり。専門家は「将来の災害を見据えた予算の使い方が重要だ」と警鐘を鳴らす。
「災害対策本部としての機能が十分に発揮できない恐れがある」。災害時に高速道路各社の拠点となる管理事務所の調査では、東日本、中日本、西日本の3社で、ハザードマップの浸水想定区域内にある事務所に設置されていた非常用自家発電設備が約2割に上った。
管理事務所は、インターチェンジ(IC)近くにあることが多い。10月の台風19号による河川の氾濫で浸水した事務所はなかったが、常磐自動車道の水戸北スマートIC(茨城県)や、上信越道の小布施スマートIC(長野県)は水没。東日本高速の担当者は、検査院の指摘を受けて「別の建物を対策拠点にできるよう対策を取った。今回の台風を教訓として生かしたい」と話した。
台風19号では、決壊した場合に人的災害が生じる恐れがある「防災重点ため池」が東北や関東の計12カ所で壊れ、住宅が浸水するなどの被害が出た。検査院が全国のため池約1万カ所を調べたところ、各自治体が国の指針より緩い基準で耐久性を判定していたものが約4割あった。
地震への備えが不十分だったケースも。河川管理施設や下水処理場などで、水門のゲートや排水ポンプを動かすための電気設備は、最大級と想定される地震に対応できるように耐震調査が求められているが、調査対象の約6割で実施されていなかった。国土交通省は「施設の管理を担う自治体に助言しながら、耐震性の確保に取り組んでいく」としている。
ダムや取水施設などの管理施設を対象とした検査では、震度6程度以上に対応できる基準で設計されたものが約1割にとどまることが判明。残りは、耐震強度が確認できなかったり、基準に達していなかったりした。管理施設内の配電盤や制御盤が損壊するとダムや取水施設が運転不能になるため、検査院は「水害など二次災害の恐れがある」と指摘している。
静岡大防災総合センター長の岩田孝仁教授(防災行政)は「これまでは大規模災害が起きるたびに、後追いで対策を講じていた。今後予測される災害への備えに費用をかけることが重要で、復旧費の削減にもつながる」と話している。