ジャカルタレター

大連立成立 2期目のジョコ政権、民主化後退の懸念も

 2期目のジョコ・ウィドド大統領による閣僚人事では、インドネシアを中心に展開する配車サービス、ゴジェックの共同創業者で前最高経営責任者(CEO)のナディム・マカリム氏が、閣僚の中で最年少である35歳で教育文化相に任命されたことが話題となっている。

 ゴジェックは、公共交通機関のインフラが整っていないインドネシアにおいて、今や人々の足として欠かせない存在であり、配送に料理の出前など同社のサービスが生活の一部として隅々まで定着している。同社を世界有数のスタートアップに成長させた手腕が、教育分野でどれほど生かされるか不透明ではあるが、「デジタル経済大国」を目指すジョコ大統領の目玉人事であることは確かだ。

 対抗馬を国防相に

 しかし、大きな論争を生んでいるのは、最大野党グリンドラ党の党首で4月の大統領選挙の対抗馬として戦ったプラボウォ氏を国防相として任命したことであろう。プラボウォ氏の入閣により大連立が成立し、実に議会の74%を占める議席が与党となった。これにより、ジョコ大統領の今後5年間は反対勢力もおらず、安定政権が続くことになる。それにより民主化がさらに後退するのではないかと危惧されている。

 現在、議論になっているのは、大統領の任期だ。憲法を改正して、現在の5年2期までという制限を撤回し、3期にまで延ばすという案、また8年2期にすべきだという案が浮上している。スハルト政権が32年に及ぶ長期独裁政権であったことから、民主化の過程で大統領の任期に制限をかけたにもかかわらず、以前に逆戻りするのかという反対の声が上がるのは当然である。

 また、現在の大統領選挙や首長選挙は直接選挙で行われているが、議会が大統領、知事、市長を選ぶ間接選挙にしてはどうだという案も議論されている。これに対して多くの市民団体は、今のインドネシア議会の状況では、間接選挙が導入されれば汚職やネポティズム(縁故主義)でトップが決まってしまう可能性が高いため、なんとしても阻止しなければならないと考えている。

 さらなる懸念としては、既にこの紙面でも紹介したように、公務員の政府批判の監視、刑法改正による大統領への不敬を刑罰対象にするといった点である。9月末に起きた法改正などへの抗議デモを受けて、大学生のデモ参加を禁じ、参加した場合は退学処分などの制裁処置をとるよう学長らに求めているといった政府の対応も問題視されている。

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