回顧2019

豚受難拡大、ワクチン接種へ転換 対応後手で見通せぬ終息

 豚やイノシシの伝染病、豚コレラ(CSF)の感染拡大が止まらず、中部地方から養豚の盛んな関東地方にも飛び火した。農林水産省はウイルスを媒介する野生イノシシの対策強化で封じ込めを図るも、対応が後手に回ったことで失敗に終わる。9月にはそれまでの慎重姿勢を撤回し、豚へのワクチン接種を実施する方針に転換したが、今も終息は見通せず、養豚農家の苦難が続く。

 豚コレラは2018年9月、国内では26年ぶりに岐阜県で発生した。19年に入って感染地域が拡大。愛知県など中部で養豚場などの飼育豚や野生イノシシでの発生が相次ぎ、9月には埼玉県で飼育豚の感染が確認されたことで、関東地方にまで広がった。一連の発生に伴う豚の殺処分は15万頭を超えた。

 本州の一大産地である関東にまで波及したことで、農水省はようやく方針を転換。06年に中止していた豚へのワクチン接種の実施を決める。10月25日以降、飼育豚や野生イノシシで感染が確認された愛知県など12県で接種が行われた。未発生の隣接県にも順次広げる。

 農水省は当初、接種に消極的な理由について「実施すれば豚コレラを撲滅していると国際機関が認定する『清浄国』への早期復帰が難しくなり、豚肉輸出への悪影響が懸念される」と説明していた。しかし、ワクチンを使っていれば感染地域が拡大せず、業界全体の打撃を現状より抑えられたとの見方もでき、農家から「もっと早期に接種を決めるべきだった」との批判も出た。

 一方、豚コレラとは別の病気で致死率の高いアフリカ豚コレラ(ASF)もアジアで拡大し、日本への脅威が迫っている。中国で猛威を振るい、9月には韓国でも発生。有効なワクチンがなく、日本への侵入を許せば豚コレラ以上の深刻な被害が懸念される。空港や港といった水際でウイルスを食い止める農水省の対応が問われている。

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