消費動向、五輪後の内需に注目 消費者心理は連続改善…有識者の見立ては
内閣府が8日発表した昨年12月の消費動向調査によると、向こう半年間の消費者心理を示す消費者態度指数(2人以上世帯、季節調整済み)は前月から0.4ポイント上昇し39.1となり、3カ月連続で改善した。今年の景気は、昨年10月の消費税増税の余波や、夏場の東京五輪・パラリンピックの終了後の内需の動き、海外発の下振れリスクが注目される。景気失速を警戒する政府は昨年12月に決定した経済対策を通じて下支えする姿勢だが、家計や企業の耐久力が試されそうだ。
内閣府は、消費者態度指数の動きからみた消費者心理の基調判断について、前月の「持ち直しの動きがみられる」を据え置いた。
個人消費は、国内総生産(GDP)の6割弱を占め内需の大黒柱だが、足元の基調は力強さを欠くとの声もある。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏は今年の景気のポイントの一つに「消費税増税による負の影響がどこまで続くか」を挙げる。政府はキャッシュレス決済へのポイント還元策などの対策を講じたが、三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩氏は「増税の影響はある程度残る」とみる。
夏場の東京五輪・パラリンピックをめぐって、小林氏は「春先以降は五輪効果で個人消費が盛り上がり、訪日外国人客の需要も少しずつ高まる」とし、年前半の景気は底堅いとみる。
半面、五輪終了後の景気失速への警戒感は根強く、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「関連需要がはげ落ちて厳しくなる」と指摘。政府は経済対策の一環でマイナンバーカードを活用した新たなポイント還元策を9月に始めるが、肝心のマイナンバーカードの普及率は約15%にとどまる。
一方、米中貿易摩擦の行方や地政学リスクなど海外発の要因は読みにくい。
外需について、斎藤氏は「昨年はとても厳しかったが、今年は少し持ち直す」とみる。トランプ米大統領は米中貿易協議の「第1段階」合意に今月15日に署名すると表明。米中摩擦は一時休戦状態にあるが、世界経済を揺さぶり続けてきたテーマだけに先行きをめぐる過度な楽観は禁物だ。
足元では、米軍によるイラン精鋭部隊司令官殺害を契機に中東の地政学リスクが顕在化。米国とイランの本格衝突に発展すれば、円高・株安の進行や原油価格の急騰を通じて、日本の実体経済にも打撃を与えかねない。(森田晶宏)