中国の「一帯一路」構想 ミャンマーへの思惑
警戒感強く距離模索
しかし、圧倒的な経済力を有する中国に対するミャンマー側の警戒心は根強く、アウン・サン・スー・チー氏も国内世論に配慮しながら中国との距離感を模索する。折しも、ラカイン州のイスラム教徒であるロヒンギャの対応をめぐって欧米諸国と対立する同氏にとって、国連安保理でミャンマーを擁護する立場をとる中国は、大きな後ろ盾となっている。圧力をかけ続ける欧米諸国と一線を画し、国際社会にミャンマーに対し建設的な支援を訴える中国は、かけがえのない存在となりつつある。19年4月に北京で開催された第2回「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムに、アウン・サン・スー・チー氏は2年連続で出席し、ミャンマーの平和と国民和解に向けた中国の継続的な支援を改めて要請した。
ミャンマーを経由し中国西南部をインド洋とつなげたパイプライン敷設プロジェクトは、「一帯一路」構想の中で最も成功したプロジェクトの一つとみなされている。さらに現在、中国とミャンマーとの間では、両国間を高速道路や鉄道でつなぐ「中国・ミャンマー経済回廊」のプロジェクトも進行しつつある。
一方、「一帯一路」構想をめぐって「新植民地主義」と批判を受ける中国は、プロジェクト自体の持続可能性を意識することが重要課題となっている。環境保護を無視するような強引な開発手法や、地元にメリットが還元されず「債務のわな」に陥るような「ウィン・ルーズ」の関係になれば、ミャンマーの反中感情をより増幅させる要因となろう。
【プロフィル】水谷俊博
みずたに・としひろ 東京外国語大学ビルマ語専攻卒業。2000年ブラザー工業入社、06年日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。ジェトロ・ヤンゴン事務所勤務などを経て、19年9月よりアジア経済研究所研究企画部研究企画課総括課長代理。42歳。岐阜県出身。