海外情勢

政治リスク山積、今年のM&Aは動き鈍いか 19年に比べ一転減速の見通し

 2019年の世界のM&A(企業の合併・買収)市場は、世界経済の景気後退懸念がくすぶっていたにもかかわらずヘルスケア業界を中心とした大型案件が立役者となり活況に沸いた。これに対し20年は、米大統領選などをめぐる世界の不確実性の高まりが重しとなり、勢いを欠く見通しだ。

 大型案件は縮小か

 地政学的な緊張や市場の不安定さが拡大しているにもかかわらず、大型案件が次々と浮上し、19年の世界のM&Aの総額は2兆9900億ドル(約327兆円)と、過去5番目の高水準となった。

 中でも大型案件が目立ったのはヘルスケア業界だ。19年のヘルスケア業界のM&Aの取引額は4610億ドルと、過去最高を記録。米ブリストル・マイヤーズスクイブによる米セルジーンの買収や、米アッヴィによるアイルランド・アラガンの買収など年始早々から超大型案件が相次いだ。

 米バンク・オブ・アメリカ(BOA)の欧州・中東・アフリカ部門のヘルスケアバンキングの責任者であるクリスティーナ・ディックス氏は「薬価引き下げ圧力や米国の医療保険制度改革などの課題に直面する中、製薬会社は今後も事業ポートフォリオの最適化に注力するだろう」とみている。

 これに対し20年は金融市場や政治をめぐる先行き不透明感が強まり、世界全体のM&Aの伸びも減速する公算が大きい。米大統領選や、英国の欧州連合(EU)離脱、米中などの関税合戦、世界の巨大企業を対象とした規制強化策などをめぐる不確実性が経営層を悩ませている。

 米モルガン・スタンレーのM&A部門責任者を務めるロバート・キンドラー氏は「規制面の問題などで、20年には大型案件が減少する可能性が高い」と指摘。同氏は件数こそ19年に匹敵する水準となるものの、金額ベースで縮小するとみている。

 また、法律事務所カークランド・アンド・エリスのM&Aパートナーを務めるジョナサン・デイビス氏はパイプライン(候補案件)は豊富であるものの、市場の変動や政治的混乱を嫌気して取引を敬遠する企業が増える可能性があると指摘。「多くの企業の間で前向きな協議が進行中だが、米大統領選に伴う政治や規制面などの不確実性、ここ最近の金融市場の不安定さといった逆風によって抑制されるだろう」との見方を示した。

 株式交換が主流へ

 将来の市場変動に対処するため、M&Aの取引手段として現金よりも株式を利用するケースが増えている。市場の振幅が拡大する中、19年の米企業の株式交換によるM&Aの規模は7530億ドルと、00年以来で最高となった。

 JPモルガンの北米M&A責任者であるアヌ・アイエンガー氏は世界の不確実性に対処するための手段として、今後も株式交換がM&Aの主流になるとの見方を示した。(ブルームバーグ Nabila Ahmed、Jan-Henrik Forster)

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