海外情勢

印政権が国籍法で「反イスラム色」を強化 抗議活動激化、分断深まる

 インドのモディ政権が反イスラム教色の強い政策を次々と実行している。国民の約14%を占めるイスラム教徒を差別する意図はないとしているが、2019年12月の改正国籍法の議会通過を機に国内で抗議活動が激化。ヒンズー至上主義団体を支持母体とする与党インド人民党(BJP)による支持固めの方策とみられ、多宗教の同国で分断が深まっている。

 安倍首相と会談延期

 路上で激しく炎を上げるタイヤ、住民らに催涙弾を放つ治安部隊-。昨年12月11日、インド北東部アッサム州の中心都市グワハティで抗議活動が激化した。外出禁止令が発令され、翌日には治安部隊の銃撃で2人が死亡。安倍晋三首相は同15日から予定していたグワハティ訪問とモディ首相との首脳会談を延期した。

 きっかけは議会を通過した改正国籍法だ。パキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンから14年末までに来た移民に対し、宗教的迫害が理由ならインド国籍を与える内容。対象は同国で多数派のヒンズー教のほか、キリスト教や仏教など6宗教の信徒で、イスラム教徒は含まない。

 モディ政権はイスラム教徒を除外した理由について「(イスラム教徒が多数派である3カ国で)宗教的迫害に直面していない」と説明している。

 改正国籍法とともに問題視されているのが、19年8月末にアッサム州で発表された国民登録名簿だ。不法移民対策として、長年の居住を証明できる人を国民と認める制度で、登録を求めた約3300万人のうち約190万人を除外した。政権は全国で実施する方針で、改正国籍法の対象となる6宗教の信徒は除外されても国籍取得に道が開かれるが、イスラム教徒は異なる。

 モディ政権は他にも、パキスタンと領有権を争い、インドで唯一イスラム教徒が多数派だった北部ジャム・カシミール州の自治権を同8月に剥奪。同11月には最高裁が、ヒンズー教徒とイスラム教徒が所有権を争う聖地アヨドヤの土地にヒンズー教寺院建設を認め、政権の意向に沿う形となった。

 ヒンズー教徒も反発

 昨年5月の下院選で圧勝し「数の力」で強硬姿勢を取る政権に対し、改正国籍法をめぐる抗議活動は全国に拡大。イスラム教徒だけでなくヒンズー教徒の一部からも、法の下の平等を定めた「憲法に反する」との批判が出ている。

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報道官は同12月13日「国籍法の改正は差別的」と懸念を表明。最大野党国民会議派の上院議員、チダムバラム元財務相は、一連の動きの裏に「インドはヒンズー教の国」と強調する意図があると地元紙で指摘した。(ニューデリー 共同)

【用語解説】インド人民党

 ヒンズー至上主義の旧ジャンサン(大衆連盟)党系が1980年に結成した政党。ヒンズー教に基づく社会を目指す組織「民族義勇団」が支持母体。96年下院選で第1党に躍進。98年、バジパイ政権下で核実験を行った。2014年の下院選で単独過半数を獲得、モディ政権が誕生した。19年の下院選も圧勝した。(ニューデリー 共同)

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