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イラン・ソレイマニ司令官殺害は自衛行動か 米トランプ政権、揺らぐ説明

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 米軍がイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官をイラクで殺害したことに関し、同司令官が画策していたとされる攻撃をめぐるトランプ米政権の説明に不信の目が向けられている。政権は「差し迫った脅威があった」とするが具体的な証拠を示しておらず、説明にも揺らぎがみられる。殺害が薄弱な根拠に基づいていたとの見方が強まっていることは、イラク駐留米軍に対する反発にもつながる恐れもある。(ワシントン 住井亨介)

 政権内でトランプ氏と異なる見解

 「おそらく(イラクの首都バグダッドを含む)4つの米大使館だった」。トランプ米大統領は1月10日、ソレイマニ司令官が攻撃しようとしていた対象について、米FOXニュースのインタビューでこう述べた。

 トランプ氏はそれまでに在バグダッド米大使館が狙われていたとしていたが、インタビューでは詳しい状況について説明せず、他の3カ所については不明なままだ。

 ところが、この「4カ所の米大使館」への脅威をめぐって、政権内ではトランプ氏とは異なった見解が出ている。

 エスパー国防長官は1月12日、CBSテレビのインタビューで4カ所の大使館が標的になっていた証拠を問われ、「(そのような)情報は見ていない」と否定してしまった。

 エスパー氏は、「大統領が言ったのは、(バグダッド以外の)他の大使館にも攻撃がおそらくあるかもしれないと考えているということだ。私も他の安全保障チームも大統領と同じ見解だ」と取り繕ったものの、不自然さは隠しきれない。

 1月12日付のニューヨーク・タイムズは、複数の政権当局者の話として、攻撃の時期や場所については具体的なことが分かっておらず、米国務省当局者は「差し迫った」との表現を使ったことは「間違いだった」と話していると報道。計画の信憑(しんぴょう)性が揺らいでいる。

 与党議員も「最悪」とこきおろす殺害作戦

 トランプ氏の発言の前日には、ポンペオ国務長官がFOXニュースで、ソレイマニ司令官が計画していたとされる攻撃の「正確な時期、場所は分からない」と言及していた。

 トランプ氏には、司令官の攻撃計画がより大がかりなものだったと主張することで、殺害作戦を正当化する狙いがあったとみられる。だが、閣僚らの発言は、殺害作戦にしっかりした根拠があったのか、さらには自衛措置だったとする政権の主張が正当だったのか、逆に大きな疑念を生じさせることになっている。

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