貿易赤字が減らないアメリカ…17年間で370万人の職を奪った“脅威の国”
2018年以降、顕在化している米中貿易戦争ですが、米側で最も被害を受けているのは穀倉地帯のグレイン(穀物)ベルトを含む中西部の農家と言われてきました。
しかし、実は、コンピューターや電子部品といった先端技術分野の仕事に従事する人々が多いシリコンバレーに代表される西海岸も、中国での製造業の活況による被害を大きく受けていたことが分かったのです。
「経済政策研究所(EPI)」の調査結果によると、米の抱える対中貿易赤字は2001年の830億ドルから2018年には4195億ドルに増えました。2001年に中国がWTOに加盟して以来、年平均で198億ドル、率にすると10%ずつ増加していたのです。
毎年の対中貿易赤字額を合計した総額は、WTO加盟後の2002年から2018年までで4兆7000億ドルにもなりました。
とはいえ、2018年から2019年11月までは一転、減少しました。しかし、これはここ数年、米国が力を入れていたシェールオイル(地下深くの頁岩(けつがん)層と呼ばれる硬い地層に含まれる原油)の輸出が増えたためで、石油製品以外では増加を続けています。
今回の調査結果について、「経済政策研究所(EPI)」の貿易・ものづくり政策に関する研究部門の責任者、ロバート・スコット氏は前述のCNBCに「過去20年間で、米は500万人近くの製造業の雇用を失った。一般の米国人にとって壊滅的な打撃である」と強調。
さらに、コンピューターや電子部品といった先端技術分野で中国に職を奪われた人々が想像以上に多かったことについて、前述のロサンゼルス・タイムズ紙にこう訴えました。
「中国の経済はローテクで労働集約的だと思うかもしれません。しかし昨今は、扱う製品も、繊維やアパレル、ハイテク製品、コンピューター、携帯電話、電子機器、ビデオのスクリーンなど、急速にグレードアップしています。そしてそれは、米の雇用を奪う最大かつ唯一の産業なのです」
実際、2018年に米が先端技術の分野で抱えた対中貿易赤字額は1346億ドルで、この年の対中貿易赤字全体の32.1%を占めました。
これとは対照的に、2018年の先端技術製品の分野での対中貿易黒字額はわずか65億ドル。米の先端技術製品における貿易収支額は、2001年から2018年に1327億ドルも減少していたのです…。
巨額の貿易赤字を長年、放置した結果、莫大な富と雇用を海外に奪われてしまった米国ですが、ドナルド・トランプ米大統領が目の敵(かたき)にする中国のせいで、米の雇用が大きく奪われていたことが今回、数字の上ではっきりしたわけです。