スマホ注文でガスボンベ交換 タイのスタートアップ、顧客5万
タイではガスの配管が敷設されておらず、プロパンガスが使われている。ボンベに残量の表示はなく、いつなくなるか分からない上、配送にも時間がかかる。そこに目を付け、スマートフォンで簡単に注文すれば、素早くボンベを交換してくれるスタートアップ企業が現れた。火災保険も販売し、順調に顧客を獲得。タイ名物の屋台にも普及させたいと意気込む。
この企業は、元銀行員のポラニー・ワタナチョットさんらが創業し、2019年4月にサービスを始めた「フィンガス」。友人から「料理中にガスがなくなり大変だった」と聞かされ、事業の着想を得た。社員10人ながら、一般家庭やレストランを中心に約5万の顧客を持つ。
ポラニーさんによると、タイではガスボンベの配送システムが確立されておらず、注文して届くまで2~3日かかる。そこでスマホのアプリを開発し、利用者が住所やボンベのサイズを入力するだけで、即日配達するサービスを始めた。無料通信アプリのLINE(ライン)に設けた公式アカウントでも注文できる。
約330のガス小売店の協力を得て、首都バンコクと北部チェンマイを中心に展開。フィンガスは料金の5%を手数料として受け取る。大手保険会社とも提携して火災保険の販売も始め、今年中に顧客を20万に増やすことを目標にする。
狙いを定めるのが、タイ国内に10万以上あるといわれる屋台の飲食店だ。フィンガスはボンベの交換や保険販売だけでなく、資金繰りの支援にも乗り出す。
屋台の多くは売り上げを記録しておらず、金融機関から融資を断られるケースが目立つという。
フィンガスはガスの消費量を基に売上高を概算し、最高5万バーツ(約16万8000円)を融資する仕組みを作った。ポラニーさんは「屋台の経営者は高利で借りるしかない場合が多い」と指摘。今後は融資額を引き上げ「タイの文化」の活性化に一役買いたい考えだ。(バンコク 共同)