海外情勢

新型コロナで武漢封鎖解除後のデモ警告 中国報告書「党は世論誘導を」

 2カ月以上にわたって封鎖措置が続く中国湖北省武漢市で、長期の行動制限を強いられた市民の不満が封鎖解除後に噴出し「大規模な抗議活動が起きる恐れがある」と警告する報告書を、共産党・政府に近い研究機関がまとめたことが先ごろ分かった。矛先を習近平指導部に向かわせないため、世論を誘導するよう党に提言。関係者によると、報告書は党中央の担当部門に提出された。

 中国当局は8日、1月23日から行ってきた武漢市の事実上の封鎖を解除する。新型コロナウイルス感染症の発生情報隠蔽(いんぺい)など、当局に対する市民の不信感が広がっており、封鎖解除に伴い責任追及を求める世論が強まることに習指導部が神経をとがらせているとみられる。

 報告書は北京に拠点を置く研究機関「沃民高科沃徳網情研究院」が3月中旬にまとめた。母体の企業は機密性の高い情報を扱う資格を持ち、党・政府に政策提言を行っている。

 同研究機関は市民の心理を分析するため、感染症に警鐘を鳴らして当局の圧力を受けた女性医師に関する記事が出回った際のインターネットの書き込みを人工知能(AI)で解析。市民は悲しみや怒りの感情に火が付きやすくなっており「油断すれば小さな事件でも大きな世論のうねりとなる」と指摘した。

 封鎖解除後に真相究明が本格化し、死者数や当局の職務怠慢などに関する真偽不明の情報が大量に拡散されると予測。「大規模な(デモなど)集団的事件が起こるリスクがある」と分析した。

 その上でデマが広がる環境をつくらないようにし、大衆の感情をコントロールして誘導するよう提言。ネット管理に対する不満を抑え込むためにも、やみくもな情報統制は避けるべきだとした。

 中国当局は1月23日以降、武漢市を出る航空便や鉄道を停止し、市内でも市民の外出を厳しく制限してきた。(北京 共同)

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