国内

緊急経済対策 巨額財政出動も拭えぬ不安 頼りない家計支援

 政府は新型コロナウイルス感染症を「戦後最大の経済危機」と位置付け、巨額の財政出動を決断した。7日に閣議決定した緊急経済対策は総事業費108兆2000億円と過去最大に膨らんだ。だが世界的な感染拡大は止まらず、これで危機を乗り越えられるのか、不安は依然拭えない。

 対策の規模は、感染の拡大と軌を一にして積み上がっていった。

 「リーマン念頭」

 「リーマンの時の対応も念頭に置き、場合によっては、それを上回る対応をしていきたい」。安倍晋三首相は3月23日の国会答弁で、リーマン・ショック後の2009年4月に決定した約56兆8000億円の経済対策を超える可能性を示唆した。

 政府内ではこの時点で、新たに30兆円程度の対策を組み、昨年末に決定した総合経済対策の約26兆円と合算して「リーマン超」との見方が優勢だった。

 ところが日本国内や欧米で感染者や死者の増加に歯止めがかからず、3月25日には東京都の小池百合子知事が「感染爆発の重大局面」を宣言。28日に記者会見した首相は「かつてない規模の対策を取りまとめる」と明言し、昨年分抜きで過去最大とすることが既定路線になった。

 最終的に緊急事態宣言とセットで打ち出された対策の総額は国内総生産(GDP)の2割に達し、数字だけを比べれば、20年度の国家予算102兆6000億円(当初)を上回る規模となった。

 今回の対策は、新たな国債発行による借金だけでも1回の補正予算で最大の17兆円に迫り、異例の巨額であることは間違いない。ただ内訳を見れば、いずれ納付が見込まれる法人税や社会保険料などの支払い猶予の約26兆円や、昨年末の総合経済対策のうち未執行の約20兆円も含まれ、規模を大きく見せることに腐心した跡がうかがえる。

 規模先行で「入れられるものは何でも入れろとなった」(政府関係者)結果、各省庁の要求には「公共施設の木造化支援」など感染症対策や危機対応との関連が疑われるものも並んだ。財務省関係者は「看板を掛け替えて首相が喜びそうな事業をたくさん用意した」と自嘲気味に語る。

 旧来型の補助金事業が多数盛り込まれた一方で、家計への支援は頼りない。世帯への現金給付は全国民への一律実施を求める与野党の要求を押し切り、対象を限定することで30万円まで増額した。だが、各地で雇い止めや採用凍結が伝えられる中、苦難に見合う十分な支援とは言い難い。

 東京財団政策研究所の小林慶一郎研究主幹は「1、2カ月で尽きる額で、感染症の広がりの状況を考えると、必要な額は桁が違う」と指摘。収入が回復しなければ、返済不要の「所得連動型ローン」と呼ばれる融資の仕組みの導入を訴える。

 さらなる重圧

 借金に頼った巨額支出は、かねて先進国で最悪水準と言われてきた日本の財政にさらなる重圧をかけることになる。

 財務省幹部は「今は各国が支出拡大にかじを切り『赤信号、みんなで渡れば怖くない』で国債を増発しているが、ギリシャの財政危機もリーマン・ショック後の経済対策の結果として起きた」と不安を漏らす。

 感染拡大を封じ込めたとしても、危機をくぐり抜けたその先で、金融市場が日本経済を見る目が厳しくなっていることも予想される。

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