「コロナ後」へ製造業変革の兆し 海外依存への危機感
長年の課題を再認識
一方で、この機運をビジネス拡大につなげようとする企業の動きも見られる。産業用ロボットやファクトリーオートメーションなどのビジネスを展開するスイス・ABBは、既存顧客に対し設備遠隔モニタリング・診断サービスやプログラミングシミュレーションサービス、VR(仮想現実)技術などを年内は無償で提供するとした。これは既存顧客の生産回復・維持をサポートすると同時に、今後のデジタルサービス拡大の布石にもなるであろう。
中国製造業で長年唱え続けられていながら、新型コロナによって差し迫ったものとして再認識されることになった課題は他にもある。中国製造業では大企業や買い手の立場が強く、サプライチェーン全体としての相互連携やサプライヤーとの協業体制が弱いと指摘されてきたが、どんな大企業であってもサプライチェーンが途切れれば生産・販売が成り立たないことを身をもって経験することになった。そして、キーテクノロジーやキーデバイスの海外依存は致命的な影響を受けることになりかねないと改めて危機感を強くしている。中国製造業の変化は第3次産業に比べると目立たないかもしれないが、新型コロナが大きな意識変革をもたらし、ポストコロナに向け大きく変化していく可能性を秘めている。
日中の製造業のつながりは深い。中国に生産拠点を設置している日本企業、中国企業に設備・材料・部品などを納入している、もしくは中国から製品・部材を調達している日本企業は非常に多い。拠点としての中国、顧客として、サプライヤーとして、そして競合としての中国製造業の動向を、今後より注視していく必要があるだろう。(野村総合研究所〈上海〉・板谷美帆)
【プロフィル】板谷美帆
いたや・みほ 中国・華東師範大学卒。在中国日系エレクトロニクスメーカーを経て、2011年野村総合研究所(上海)に入社。産業三部主任コンサルタント。専門は、中国市場分析・事業戦略、中国政策分析など。東京都出身、北京在住。