専欄

中国「新型コロナ対策と幹部の形式主義」の問題

 中国における新型コロナウイルス感染対策の重点は、海外からもたらされるものへと移っているが、コロナ対策の過程で幹部の形式主義が問題となっている。共産党中央弁公庁は先月中旬、形式主義の問題を解決して「小康(ややゆとりのある)社会」を全面的に実現するための「通知」を公表した。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 この通知は「新型コロナウイルス感染拡大制御の経験、教訓を真剣に総括」し、「上司を満足させて大衆を失望させる愚かなことはするな」と、党員、幹部に呼びかけている。党中央弁公庁は2019年3月にも、形式主義を批判し、その一掃を求める通知を出している。今回の通知はその後1年間の総括、とりわけ感染拡大制御の経験を踏まえたものである。

 習近平指導部は発足以来、厳しい反腐敗の取り締まりを続ける一方、習近平を核心とする指導部に足並みをそろえる「一致意識」を持ち、習近平指導部を断固擁護するよう呼びかけてきた。そのため、一部の幹部は過ちを恐れて指示・命令の出るまで積極的に動かず、自主性、主体性を発揮しないという副作用も生じている。

 習近平はそうした事情を考慮し、16年1月の演説では、他に先駆けて試行した新たな政策の経験不足による失敗や誤り、発展を促進する政策を履行する中での過失などは、法規違反、私利を図る行為と区別すべきだと強調している。

 昨年3月と今回の通知にはこの習近平演説の趣旨が盛り込まれているが、党機関紙「人民日報」(4月27日付)は形式主義、官僚主義の代表例8件を取り上げ、その一つとして、ハルビン市(黒竜江省)副市長らの感染対策における無責任、無為無策問題を指摘している。

 それによると、ハルビン市の指導的幹部や担当部門は認識不足で、指導者として、あるいは担当者として、責任を誠実に果たさなかったため、4月以降、海外からの感染者によって感染拡大の第2波がもたらされたとして、副市長を「過失として記録にとどめる」処分にしている。これは警告よりは重いが、解任などよりは軽い処分である。

 また、ハルビン医科大学の副校長は緊張を欠き、職責を果たさず、そのため付属病院の院内感染を引き起こしたとして、同様の処分となっている。

 共産党政権にとって形式主義、官僚主義の問題は今に始まったことではない。それをなくすことは永遠の課題といえるだろう。(敬称略)

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