コロナショックが暴く「財政破綻」の嘘 赤字膨張でも金利はマイナス
その西村氏の舌の根も乾かぬ5月19日付で、小林氏の論文が「週刊エコノミストOnline」に掲載された。それによると、小林氏は財政が悪化を続けていることが消費者や企業の将来不安を高めるとし、「先に高い経済成長を実現して、あとで財政再建をする、という戦略は成り立たない」と断じた。そして「非常に大きな増税や歳出削減ができなければ、債務膨張が続き、債務比率は無限大に向かう。数十年以内にはギリシャやアルゼンチンのような財政破綻が起きることだろう」と警告している。なのに「今は財政再建にこだわらず国債発行」と平気で先輩に言えるのか。
筆者の推察だが、今はコロナ恐慌に苦しむ消費者や企業救済のために債務膨張には目をつぶるが、コロナ禍が一段落すれば大型の財政支出カットと消費税増税に転じるというデフレ温存シナリオに沿っているのだろう。
前述のコロナ関連諮問委員会には小林氏のほか、財政均衡を重視する3人の経済学者が参加する。このうち小林氏と大阪大学大学院教授の大竹文雄氏は平成23年5月、東日本大震災復興財源のために増税が必要だとする論文をまとめた伊藤隆敏、伊藤元重両東大教授(当時)の呼びかけに賛同した。
「日本はギリシャみたいになる」と騒ぐ当時の菅直人首相は一も二もなく震災増税に走り、続く野田佳彦首相は増税して財政健全化すれば消費者の不安がなくなって景気はよくなると信じ込んで、大型の消費税増税に向けた3党合意を成立させた。小林氏の考え方は民主党政権の増税デフレ容認を彷彿させる。
そんな「悪夢」の民主党政権時代をなぞる「専門家」たちを安倍政権がコロナ復興策作成で登用するとは何という皮肉か。
安倍政権は小林氏らの財政破綻論がなぜフェイクなのかを見抜けないと、このまま復興増税の罠にはまってしまいかねない。そうでなくても「財政破綻」幻想は与党の一部でも出始めている大型消費税減税案を潰す。すると破綻するのはアベノミクス、即ち日本再生策である。(編集委員・田村秀男)