徹底した“非対面”の接客 コロナ感染防止の「ホテルシェルター」
シェルターの利用者として想定したのは、家族への感染リスクなどを減らしたいと願う医療従事者や社会生活に欠かせない「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる職業の人たち。さらには、外出自粛によって在宅時間が増えたことで、家庭内暴力(DV)や児童虐待のリスクが高まっているという指摘がある中、そういった心配を抱える人にもホテルを安全な場所として利用してもらおうと考えた。
約1カ月かけて感染症専門医の監修を受けて独自の感染防止ガイドラインを策定した。安心できる滞在先を提供するために、決してホテルが感染拡大の場になってはならないからだ。館内を宿泊者が出入りするエリアと従業員のエリア、両エリアの中間エリア-の3区画に分類。寝具などは宿泊者自身が交換して、室内清掃は利用後3日が経過してから行うように決めた。体調不良が判明した際は、医師によるオンライン診療を紹介することもある。
一泊の料金は3千円程度に抑え、予約は最低5日間からとした。5月から導入を始めたチルン系列の2ホテルだけで事前予約はすでに約500人にのぼった。
全国から問い合わせ
コロナ禍による宿泊業界への経済的打撃は大きい。帝国データバンクによると、全国の新型コロナウイルス関連倒産は6月1日現在202件。このうち旅館・ホテルなどは39件と、飲食関係(25件)などを抑えて最多だ。関西でも大阪市の「WBFホテル&リゾーツ」が経営破綻、京都市では中心部にある阪急京都河原町駅の真上のビジネスホテルが閉館を決めた。帝国データバンクの担当者は「ホテルは建物を所有し、負債を抱えながら経営しているところが多い。宿泊がないとどうにもならず、時短営業などで乗り切れるレベルではない」と話す。
一方、国内では病院の病床が足りなくなる「医療崩壊」の懸念が拡大したため、4月、ビジネスホテルチェーンのアパホテル(東京)などが病院側の負担軽減などを目的に軽症者らの受け入れを表明した。
チルンの龍崎社長はこうした動きについて「合理的で、宿泊施設の経済的維持にも効果がある」と話す。ホテルシェルターを運用する「HOTEL SHE,KYOTO」の笠井支配人も「自分たちにもまだできることがあると思って取り組んでいます」と話す。5月30日からは通常客の受け入れも再開したが、宿泊フロアを分けて今後もシェルターの運用を続ける。
「今必要なのは業界の連帯」と龍崎社長。5月下旬からは自社のシステムを活用し、稼働率が下がったホテルと、自宅以外の滞在先を求める人をマッチングさせる予約サイトを立ち上げた。ホテルシェルターの感染防止ガイドラインも提供しており、すでに全国のホテルや民泊施設など230カ所以上から申し込みがあるという。「新たな需要に業界が一丸となって適応していくことで、ホテルが社会の新たなインフラとなっていく」と力を込めた。