内部通報者の保護が一歩前進 守秘義務導入、報復への罰則は見送り
企業や行政機関の不正を内部告発した人を守るための公益通報者保護法が、14年ぶりに改正された。法人内に設置する通報窓口の担当者らに守秘義務を課し、「一歩前進」と評価の声が上がる一方、告発経験者らの悲願である、報復した法人に対する罰則は企業側の反発で見送られた。専門家からは通報窓口の独立を担保する必要性が指摘されており、罰則導入の検討も含め、早くも「次の改正」が期待されている。
「信頼できる窓口だという認識が、どれだけの従業員にあるのか意識調査を」。5月に開かれた内閣府消費者委員会(消費者委)の冒頭、委員の一人は事務局に意見した。改正法を受けて法人が窓口を整備しても、通報内容が内部でどのように調査され、個人情報がどう扱われるのかは不透明。経営者と通じていれば、通報者が報復される恐れは依然として残る。
消費者委は2018年末にまとめた報告書で、報復した法人への是正勧告や法人名公表といった行政措置の導入を提案。しかし、経団連側が「画一的な行政措置や罰則導入は人事政策をゆがめ、乱用的通報が増加する」と反発。自民党の消費者問題調査会が今年2月に示した提言に行政措置は入っていなかった。
国会審議では導入を見送った理由について与野党から質問が相次いだ。衛藤晟一消費者行政担当相は「通報が正当な内容か、通報が原因で解雇などの報復を受けたのか消費者庁が事実認定し、行政措置を行うには多くの課題がある。仮に体制を確保できても、通報と報復の因果関係を立証するのは行政機関では困難」との答弁を繰り返した。
衆院では結局、報復された通報者が裁判を起こした場合、立証責任を法人側に課すことを今後の検討事項に盛り込んだ修正案で可決。「前進」「罰則なく残念」と議員の間でも評価が割れた。
同法に詳しい中村雅人弁護士は、報復を抑止し、審査もできるような通報窓口を外部にも設ける案を検討すべきだと指摘する。「例えば労働局は少人数で事実認定や行政措置をしている。庁内で体制を組むのが難しければ、独立性が担保された第三者機関として公益通報担当部局をつくってはどうか」
運輸業界の闇カルテルを内部告発し、報復人事で約30年間閑職に追いやられた経験を持つ串岡弘昭さん(73)は「報復は労働者の将来を奪うことを意味する。罰則導入はもちろん必要で、導入までは法人が独自に『絶対に報復しない』と従業員に示すことも必要だ」と強調した。