追い詰められる地銀、支援に励むも…「お達し」連発の政府に恨み節
このため、店舗網の見直しが加速するとの見立ても根強い。中小企業の顧客が多い地銀はこれまで、地域密着で店舗網を張り巡らせてきた。しかし店舗を維持するには、不動産を借りたり、行員を配置したりする負担が大きいため、すでに削減傾向にある。
「(通常は支店近くに居住する)支店長が自分で車を運転し、毎日1時間かけて通勤するケースも珍しくない」(地銀関係者)状況といい、すでに店舗削減の影響は出ているが、業績悪化を受けてさらに見直しが加速しそうな情勢だ。
政府の要求に振り回され
新型コロナの感染拡大後、地銀は地域経済の担い手として地元企業の資金繰り支援に奔走してきた。日銀によると、5月の地銀の貸出平均残高は前年同月比3・8%増の259兆6482億円で過去最高だった。
中堅地銀幹部は自ら得意先の融資相談に赴き、「火の手が強いところから優先順位を付けて消して回っているような状況」と自嘲気味に話す。「地銀も捨てたものじゃないな」と話す財務省幹部の冷めた評価とは対照的だ。
地銀幹部らは「今こそ存在価値を示すとき」と気合を入れるが、政府から相次ぐ要請に不満も出てきた。
4月の終わりには、大型連休期間中も店舗を開けて対応するよう求める麻生太郎財務相らの談話が発表。複数店舗を開けて対応した関西の地銀幹部は「外出自粛要請中にたくさんの人が来るわけがない」と戸惑いを隠さない。
また、5月27日には金融機関に貸し倒れリスクがない制度融資だけではなく、自前融資が減っていないかを点検する方針が示された。麻生財務相の談話には「手綱を緩めることなく」などと記されており、金融庁にくぎを刺さされた形だ。別の地銀トップは「ついこの前まで無利子無担保の制度融資をやれと大号令が出たばかりなのに」と不平をこぼす。
政府からの矢継ぎ早の要求に、地銀からは「金融機関が融資で守りに入るのは、それだけ(マイナス金利政策による構造不況で)金融機関が傷んでいるからだ」との恨み節も出ている。