高論卓説

クレジットカード60周年の歴史に学ぶ 官民の知恵でキャッシュレス社会実現

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、キャッシュレス社会の方向性を進めているようにみえる。スーパーやコンビニなどで、現金に触れるのは感染の恐れがあるといわれている。クレジットカードに加えて、一昨年からブームになっているQRコード決済をする人が目立っている。「3密」を避けるために、利用が増えているオンラインショップの決済も同様である。(田部康喜)

 政府の「キャッシュレス・ビジョン」(2018年)によると、大阪・関西万博(25年)に向けて、キャッシュレス決済の比率の目標を40%とし、さらに将来的には世界最高水準の80%を目指している。各国のキャッシュレス比率(16年)は、韓国の96.4%を筆頭にイギリス68.6%、中国65.8%、オーストラリア58.2%、スウェーデン51.5%、アメリカ46.0%。経済産業省の推定によると、日本は19年に26.8%である。

 日本のクレジットカードの歴史を振り返ると実は、今年は60周年。ここでは、旧日本信販(現三菱UFJニコス)の広報部長などを永らく務めた業界の専門家である、風間眞一氏が週刊金融財政事情に年明けから連載した「“誕生60年”-わが国クレジットカードの歩み」を参照にしながら、月賦百貨店の丸井(現・丸井グループ)が1960年3月に紙製のクレジットカードを発行して以来、官民が業界の育成に取り組んできた軌跡をたどってみたい。

 それは、政府のキャッシュレス化に向けた産業政策が学ぶべき歴史である。60年代に都市銀行が子会社の形で、クレジットカード会社を設立したのは、旧大蔵省(現財務省)が銀行法上の規制に抵触するとして本体がカードを発行するのを許可しなかったからだ。世界的にみても、プラスチックカードで早いといえるのは、西武百貨店が60年12月に発行した自社カードだった。ダイナースクラブは紙製の手帳型であり、日本法人が国内に限ってプラスチック製を認めるように要請したところ、全世界規模で採用されたという、日本の先進性を風間氏は紹介している。キャッシングサービスもまた、日本発だという。

 旧大蔵省は82年銀行法を改正し、銀行本体がカード事業に進出できるようにした。旧通商産業省(現経産省)は、規制緩和の一環として、95年から流通系カードに全国で自由に分割払いやリボ払いを認めた。それまでは信販会社や中小小売団体系の事業の領域として、門戸を閉ざしていたのだった。

 総務省は経産省と連携して、2020年度にQRコード決済の統一を目指す「JPQR」事業を推進している。1台の端末によって、百花繚乱(りょうらん)状態のQR決済会社に対する参加申し込みができるのと、さまざまなQRコードをこの1台で読み取れるシステムである。

 デジタル通貨の時代の到来をにらんで、メガバンクとJR東日本、NTTグループをはじめとする通信会社などが4月に協議会を立ち上げた。さまざまな電子マネーの相互利用を目指している。

 政策当局と民間企業が知恵を合わせるところに、キャッシュレス社会の実現はある。還暦を迎えた、クレジットカードは19年3月末の発行枚数が、2億8394万枚までに成長しているのである。

【プロフィル】田部康喜

 たべ・こうき 東日本国際大学客員教授。東北大法卒。朝日新聞経済記者を20年近く務め、論説委員、ソフトバンク広報室長などを経て現職。福島県出身。

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