TikTokへ逆風、個人情報が中国に渡る恐れ インドや米で排除の流れ
中国企業が手掛ける動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」への逆風がやまない。動画を編集できる使い勝手の良さから、日本の中高生らも仲間と踊る様子を競うように投稿する。しかし個人情報が中国へ渡る恐れが浮上し、米国など各国で排除されかねない岐路に立たされた。米中関係の悪化も影を落としている。
軽快な音楽に合わせて、楽しそうに口パクで歌って踊る若い男女ら-。ティックトックの動画は数十秒と短く、アプリ内には複数の動画フォーマットが設定されているため難しくなく、「世界で普及した初めての中国発ソーシャルメディア」(米紙)に成長した。インスタグラムやツイッターとも肩を並べる。
開発したのは2012年創業のIT企業、北京字節跳動科技(バイトダンス)だ。16年9月に中国国内向けの動画投稿アプリ「抖音(ドウイン)」を発表。その海外版となるティックトックを17年5月にリリースした。バイトダンスには、ソフトバンクグループ傘下の巨大ファンドも出資する。
米調査会社によると、両アプリはこれまでに全世界で累計20億回以上ダウンロードされ、米国やインドも有力な市場。日本でもアイドルグループや企業が使用し、自治体も公式アカウントを持つなど影響力は大きい。
ティックトックはドウインと分けて運営され、トップは米メディア・娯楽大手ウォルト・ディズニーの元有力幹部が務める。
「『中国色』をできるだけ隠したいという意図を感じる。中国系アプリと知らない利用者も多いはずだ」。ある広告業界関係者はこう話す。
厳しい見方が一気に広がったのは昨年11月だ。
中国政府による新疆ウイグル自治区のイスラム教徒の少数民族、ウイグル族への弾圧を非難する動画を「新たなホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)だ」と投稿した米国人女性のアカウントが一時使用停止となり、中国政府の意向をくんだ措置と見なされ、批判が殺到した。
ポンペオ米国務長官は6日、国内で使用禁止にすることを検討中だと表明。ティックトックは「中国政府に利用者のデータを提供したことはないし、求められても提供しない」と反発したが、既にインドが使用禁止を決めるなど逆風は続く。
米メディアによると、ティックトックは10日までに香港から撤退した。香港国家安全維持法(国安法)の施行を受け、当局へ協力して世界的な批判を受ける事態を避けたかったとみられ、世界展開の維持に向けたイメージ戦略に懸命な姿をのぞかせている。(上海 共同)