高論卓説

整合性欠く「Go To トラベル」 他省庁と横断的に協力を

 接触確認アプリ「COCOA」活用促進を

 新型コロナウイルスへの感染が再拡大する中、政府が緊急経済対策の一つとして実施する総額1兆6794億円の「Go Toキャンペーン」事業。本来は感染防止を徹底し、新型コロナ流行収束後、甚大な影響を受けている観光・運輸業、飲食業、エンターテインメント業などを対象に、期間限定の官民一体型需要喚起キャンペーンを実施しようというものだ。しかしながら第1弾の「トラベル」で早くも混乱をきたしている。(森山博之)

 確かに旅行需要の落ち込みは壊滅的ともいえる。訪日旅行者はほぼゼロとなり、緊急事態宣言で人の移動も制限され、書き入れ時の5月の大型連休はステイホーム週間に変わった。GDP(国内総生産)への生産波及効果が約5%とされる観光産業の支援は喫緊の課題だ。本来8月に実施予定だったものを4連休前の7月22日に前倒しし、収束どころか全国で感染者数が増加する中で始めた。さらに感染再拡大が顕著な東京都を除外するという、力強さを欠く変則キャンペーンとなった。

 その一方で、8月1日に予定していた大規模イベントの人数制限緩和は当面延期、「イート」は開始時期を慎重に判断することになるなど整合性を欠いている。新型コロナに対する政府の打つ手はちぐはぐな印象が拭えない。

 4月に発表した466億円を投じて全世帯へ2枚ずつ布マスクを配布する事業は、配布が遅れ、届いた頃には市中でマスクが購入できるようになっていた。SNS(会員制交流サイト)で配信された安倍晋三首相が自宅でくつろぐ様子も、国民が不自由を強いられているのに「優雅な姿」を見せつけたとして、共感どころか反感を呼んだ。

 首相が「有効性が確認されれば5月中の承認を目指す」としていた治療薬アビガンは、いまだ承認に至っていない。10万円の給付金問題も収入減の幅が大きい世帯に一律30万円給付の予定が、急遽(きゅうきょ)給付対象者1人につき10万円の支給に変わった。給付事業費は総額12兆8802億円に及ぶが、自治体によっては7月下旬になっても給付処理が完了していないところもある。

 政府は7月17日、骨太の方針で官民のデジタル化推進を閣議決定し、今後1年間を集中期間に設定しているが、給付金では日本のデジタル化レベルのお粗末さを露呈した。マイナンバーカードの所持率は2割に満たず、銀行口座とも連携していないため、オンラインで申請しても即振り込みとはならなかった。諸外国では、社会保険番号、納税者番号、身分証明書番号などの個人を特定する番号が口座にひも付けられて管理されており、短期間で処理可能だ。

 コロナ対策で期待される「接触確認アプリ」でも不具合が生じている。6月19日の特定警戒都道県との移動の解除に合わせて公開された新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)だが、7月14日の修正版までフルに機能が使えなかった。

 筑波大学の倉橋節也教授らの研究によると、観光地で接触確認アプリの利用を増やせば、濃厚接触者の追跡に効果が見込めるという。厚生労働省はアプリを公開しただけで、利用を促進するような活動をしているように見えない。他省庁と協力して「Go To」で活用するようなことを考えてはどうだろうか。

 ただ、その前にスマートフォンの画面に表示されるCOCOAのアイコンは変更したほうがよさそうだ。厚労省のシンボルマークがアイコンでは、あまりにもセンスがなさすぎる。

【プロフィル】森山博之

 もりやま・ひろゆき 旭リサーチセンター、遼寧中旭智業研究員。早大卒後、旭化成工業(現旭化成)入社。広報室、北京事務所長などを経て2014年から現職。大阪府出身。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング