中国を読む
中国、コロナ後のオンライン診療市場は
日本にとって参考に
中国で医療関連事業を展開する日本企業にとっては、オンライン診療やその保険適用が進めば、総体としての医療へのアクセス量が増加し、例えば医薬品メーカーの場合、新たな処方機会が生まれたり、オンライン診療のインフラを支える医療システムや、5G普及が本格化した際の医療機器市場が拡大したりする可能性がある。
オンライン診療を推進させるにあたり、中国政府は医療インフラ整備など黒子に徹し、医療保険など制度面での逸脱がないよう手綱は握りつつも、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)を始めとする有力企業に市場形成を担わせている。走りながら柔軟に戦略を調整していけるのが強みである。
日本と中国では医療の仕組みが異なるため一概に全てを導入することはできないものの、このスピード感や政府の関わり方は参考になると思われる。新型コロナを機に日本でも政府、企業と医療機関が一体となってオンライン診療利用促進のための中長期的な戦略を描く必要があるのではないだろうか。
【プロフィル】鶴田祐二
つるだ・ゆうじ 早大教育卒、米ノーザン・バージニア大経営学修士(MBA)。日系シンクタンクを経て、2008年野村総合研究所(上海)に入社。現在、産業三部総監。専門は消費財・小売り・ヘルスケア業界の事業戦略および業務改革。43歳。福岡県出身。