大阪市条例「第1号」の子育てマンション建設 事業者が二の足を踏む理由
付加価値となる魅力
しかし、保育施設の整備は都市部においては、喫緊の課題だ。大阪市の待機児童は4月1日時点で20人だが、希望の保育所に入れないといった「入所保留児童」は約2800人にのぼり、依然として受け皿は不足している。担当者は「事業者にとって設置のハードルは高いと思うが、子育て世代にとっては重要な施設なので、丁寧な説明と周知を行っていきたい」と話す。
協力に応じるメリットをより明確化することを提案するのは、街づくり施策に詳しい近畿大総合社会学部の久(ひさ)隆浩教授(都市・まちづくり)だ。久氏は「金銭面のほか、安全対策、送迎の車が増えることによる交通整備など事業者に求められるハードルは高い」と指摘。そのうえで、「保育施設の設置に協力することで、市が『子育て世代に安心なマンションだ』と公式にお墨付きを与え、ホームページ上でPRするなど、事業者がマンションを販売する際に付加価値となる魅力を打ち出す工夫が必要だ」としている。
背景に子育て世帯の「都心回帰」
大阪市の条例化の背景にあるのが、人気のタワーマンションの建設ラッシュに伴う、子育て世帯の「都心回帰」だ。かつては郊外のベッドタウンに住む「ドーナツ化現象」が起き、小学校の統廃合も進んだ市内中心部だが、近年は一転してファミリー層が流入している。
市によると近年、オフィス街の北、西、中央区などで14歳以下の子供の数が軒並み増加。北区では平成26年から5年間で2千人以上増えた。これらの地域では小学校の教室不足も課題となっている。
今後も子育て世帯の増加が見込まれることから、市はマンション事業者に保育枠の確保に協力を求める必要があると判断し、条例化を決めた。
とはいえ、施行後2年半近くたっても利用状況は低調だ。これについて、市の担当者は「事業者にとってメリットがあることを理解してもらえるよう、補助の内容などをまとめたパンフレットもホームページで公開し、周知していきたい」としている。(田中佐和)