高論卓説

オーバーツーリズム問題の解消法 逆説的に有効な3つの戦略

 新型コロナウイルス感染者数の若干の落ち着きを反映して、政府の「Go To トラベル」が、東京を加える様相になってきたが、インバウンド(訪日外国人客)需要が全く消えている今こそ、これからの日本の観光業の在り方について議論を行い、今後に備えなければならない。(吉田就彦)

 前回(7月22日付)のコラムでは、観光戦略の担い手である日本版DMO(観光地経営組織)の在り方を述べたが、もう一つどうしても議論をしておかなければならないことは、観光地の受け入れ体制である。京都に代表されるオーバーツーリズム(観光公害)問題は、インバウンド政策の負の側面として課題が残っており、解決策が見つからないままだ。

 観光大都市である神奈川・鎌倉の事例を見ると、狭い道路に年間2000万人の観光客であふれる観光メイン通りの小町通りは、若い観光客が多数闊歩(かっぽ)するものの、駄菓子やファストフードをぱくつきながら歩き、騒いでいる。そのような若者のだらしなさや外国人のマナー違反からつい眉をひそめる状況が優に想像できる。

 特に狭い道の集合体である鎌倉の道は、風情がある半面、膨大な量の観光客を一挙に受け入れるには相当難しい。このような状況から、昨年、鎌倉市はデジタルガレージなどと協定を結んで、観光客の流れの実態調査に乗り出した。

 常時、イベント時や季節、曜日で観光客の流れがどうなっているかを正確に把握しようとしており、そのデータ分析により有効な手立てを打とうとしている。これがオーバーツーリズム問題解決の第一歩だ。まずは正確な実態調査が必要である。

 さらに、地元の理解を得るための有効な手段としては、観光客の消費単価を上げ、観光客数を少なくする必要がある。基本的には、観光の経済効果は、観光客の消費単価×観光客数で表される。したがって、1人当たりの消費(おみやげや食事、宿泊など)が増えて、その人数が多くなればなるほど、観光による経済効果は高くなる。鎌倉の場合、東京から近く宿泊施設が充実していないことも手伝って、観光客単価が上がっていないことが予想される。

 このため第2の戦略として客単価を上げることが必要だ。一番効果があるのは、観光客の年齢を上げることである。当然、若者を排他するということではないが、オーバーツーリズムをにらむと、同じ観光客を迎え入れるにしてもより経済効果が高い方向に行けば地元の納得を得やすい。しかも鎌倉には大人が親しめる歴史・文化が神社仏閣を中心に多数ある。それらをもっと有効活用して、本物の体験型の観光を増やせば満足度も高めることができる。しかも、若者が集う海を意識する夏だけではなく、通年、誘客することもできる。

 さらに、第3の戦略として、周辺の各都市への観光客の分散が必要だ。鎌倉の周辺には、同じく素晴らしい海がある逗子、葉山に加えて、浄楽寺(横須賀市)にある運慶作仏像5体などの歴史・文化が豊富で、食も豊かな三浦半島が続く。そのポテンシャルを活用して、鎌倉観光と連携させて観光客を分散することも必要だ。

 それらの戦略を実施するためには地元の理解が欠かせないが、その最大の特効薬は、やはりきれいごとではなく地元にお金が継続的、安定的に落ちることである。そのためにも逆説的に3戦略は有効である。

【プロフィル】吉田就彦

 よしだ・なりひこ ヒットコンテンツ研究所社長。1979年ポニーキャニオン入社。音楽、映像などの制作、宣伝業務に20年間従事する。同社での最後の仕事は、国民的大ヒットとなった「だんご3兄弟」。退職後、ネットベンチャーの経営を経て、現在はデジタル事業戦略コンサルティングを行っている傍ら、ASEANにHEROビジネスを展開中。富山県出身。

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