海外情勢

民主主義vs権威主義 五輪妨害工作は氷山の一角、主戦場はサイバー空間へ

 権威主義国の筆頭格であるロシアや中国が民主主義諸国へのサイバー攻撃を強めている。今回明らかになった東京五輪の妨害工作は氷山のごく一角にすぎず、その狙いは外国選挙への干渉から新型コロナウイルス感染症のワクチン情報窃取まで多岐にわたる。民主主義陣営が防衛線を張るべき戦場は「サイバー空間」にも広がっている。

 東京五輪関係者らを狙った露軍参謀本部情報総局(GRU)は、2016年の米大統領選に干渉した。親露的と考えられたトランプ現大統領の当選を助ける意図で、対抗馬のクリントン元国務長官陣営のコンピューターに不正侵入し、大量の電子メールを流出させた。米連邦大陪審は18年、この攻撃に関与したとして、選挙当時にGRU当局者だった12人を起訴した。

 中露は今年11月3日実施の米大統領選にも干渉を試みている。米マイクロソフト社は9月、GRU傘下のハッカー集団や中国のグループによる、共和、民主両党関係者への組織的攻撃を探知したと発表した。メールアカウントに侵入を図るなどしたという。

 主要国が新型コロナのワクチン開発にしのぎを削る中、英政府機関「国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)」は7月、露ハッカー集団が英、米、カナダのワクチン開発組織にハッキングを仕掛けたと明らかにした。

 日本のワクチン開発情報も狙われている。米情報セキュリティー会社「クラウドストライク」によると、4月以降、日本国内の複数の組織に断続的な攻撃があり、中国ハッカー集団の関与が疑われている。

 専門家によると、米英などは近年、人工知能(AI)を駆使したサイバー解析技術を向上させ、中露の攻撃に先回りして防衛する能力を高めている。

(ストックホルム 板東和正)

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