株価・外為

「国際金融都市」への道のり険しく JPXトップが初の会見 システム障害「責任の重さ痛感」

 日本取引所グループ(JPX)の清田瞭最高経営責任者(CEO)は28日、定例の記者会見を開き、傘下の東京証券取引所でのシステム障害を受けた社外取締役による調査委員会について、11月中に結論が出るとの見通しを明らかにした。指名・報酬・監査委員会で社内処分まで踏み込んだ意見が出た場合、清田氏は「甘んじて受けるつもりだ」とも述べた。一方、日本経済を支えるインフラが終日マヒする異例の事態は世界から静観されており、政府や東京都が目指す「国際金融都市」構想の実力不足も露呈している。

 清田氏が記者会見を開くのは、1日の障害発生から初めて。終日売買停止に至ったことについて、「私自身も市場を開け続けることがいかに大事か申し上げてきただけに、衝撃を受けると同時に責任の重さを痛感している」と語った。

 一連の事態を重くみて、金融庁はJPXと東証に立ち入り検査を実施。検査対象の範囲が限られることから、遠くない時期に行政処分が出る可能性がある。

 東京の国際金融センター化は菅義偉首相も26日の初めての所信表明演説で 「アジア、さらには世界の国際金融センターを目指す」と言及した重要施策だ。政府はすでに海外からの金融人材の受け入れ拡大に向け、税制や在留資格の見直しに動き始めている。

 だが、現実は厳しい。英シンクタンクZ/Yenグループなどが9月に公表した国際金融センターのランキングでは、日本は4位と、前回調査から順位をひとつ落とした。国家安全維持法の施行に揺らぐ香港の5位を引き続き上回ったものの、あっさり上海にトップ3の座を奪われた。

 障害後も東京株式市場は何事もなかったかのように動き続けている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「海外投資家の間では、東証のシステム障害は話題にすらなっていない」と話す。日経平均株価の28日終値は2万3418円51銭。システム障害前の9月末から233円上振れた。米大統領選での民主党のバイデン前副大統領の勝利や米議会のねじれ解消への期待が国際金融市場を下支えしている。

 藤戸氏は「システム障害が頻発する事態になれば、東証の世界的な地位は低下しかねない。セーフティーネットを高めることが求められる」と指摘している。(米沢文)

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