高論卓説

短編映画「香港画」のリアリティー 獄中のアグネスたちに思いを寄せよう

 映画の中で印象深い少女の独白があった。「(香港基本法によって)私たちは本来ある以上の権利を求めていません。それなのに、もう半年もデモが続いている。一秒でも早く昔の楽しい生活に戻りたい。なぜ学生、サラリーマン、お年寄りまで戦わなければいけないの」

 現実には、デモは新型コロナの流行と国安法の導入で終わったが、昔の楽しい生活は戻ってきていない。一国二制度の空洞化は誰も否定できない状況になった。

 その彼らは今、どうしているだろう。摘発を受け、逮捕されていないだろうか。「取材した中には連絡を取れなくなった若者もいる。とても気になっている」(前田さん)。今月国安法で起訴されたメディア人のジミー・ライさん、未許可デモへの参加などで禁錮刑を受けた民主活動家のアグネス・チョウさんやジョシュア・ウォンさんらを含め、クリスマスやニュー・イヤーを獄中や拘置所で迎えることになった多数の香港人に思いをはせる上でも、この作品は私たちに香港の出来事を振り返るチャンスを与えてくれるだろう。

 映画『香港画』の公式HPは(http://hong-kong-ga.com/)

■野嶋剛(のじま・つよし) ジャーナリスト。大東文化大学特任教授。朝日新聞で中華圏・アジア報道に長年従事し、シンガポール支局長、台北支局長、中文網編集長などを務め、2016年からフリーに。『ふたつの故宮博物院』『銀輪の巨人 GIANT』『台湾とは何か』『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』『香港とは何か』など著書多数。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング