真山仁の穿った眼

日本シリーズで見えた“完成した人材”不信

真山仁
真山仁

球団も日本も、価値観を変える時

 もう一つ、ずっと以前から抱いていた疑問がある。

 私が小説家を目指してさまざまな懸賞小説に応募していた頃、新人賞に選ばれた作品の多くが「新人とは思えない完成度の高さ」が受賞理由だった。

 新人賞なのだから、荒削りでも、可能性を感じさせる、あるいは異彩を放つ作品を選ぶべきじゃないのか、とずっと思っていた。それは、私が完成度の高さを目指すより、「誰も書かないことを書きたい。従来の小説の常識を破りたい」という思いが強かったからかもしれないが。

 だが、新人の頃に「完成度が高い!」と称賛された作家は、短命で終わっている気がする。第一作は素晴らしかったのに、あとが続かないからだ。

 ソフトバンクは、「完成度が高い人材は、これ以上伸びない」と見切っている気がする。その上で、ギラギラした荒削りの才能を発掘し、伸ばすことにしたのではないか。

 これは、容易な方法ではない。まず、鍛えれば伸びるかどうかを判断する「目利き力」がいる。さらに、入団してからは個性を殺さず、才能を伸ばすパーソナルな指導力も重要だ。ソフトバンクは、それが出来ているから、異次元のレベルの選手がのし上がってくるようになってしまった。

 言い換えれば、この2つを、大抵の組織がおろそかにしてきた結果、新人採用で完成度ばかりが求められるようになったということだ。

 「大化けするかも知れない」あるいは、「今まで我が組織にはいない型破りの人材」という視点で選ばなければ、組織はどんどん停滞し、やがて過去の遺物化してしまう。

 日本一の名門球団・巨人の「負けっぷり」を見ていて、球団も日本も、人材採用と育成について根本的な価値観を変える時が来たと強く思った。

昭和37年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科を卒業後、新聞記者とフリーライターを経て、企業買収の世界を描いた『ハゲタカ』で小説家デビュー。同シリーズのほか、日本を国家破綻から救うために壮大なミッションに取り組む政治家や官僚たちを描いた『オペレーションZ』、東日本大震災後に混乱する日本の政治を描いた『コラプティオ』や、最先端の再生医療につきまとう倫理問題を取り上げた『神域』など骨太の社会派小説を数多く発表している。

【真山仁の穿った眼】はこれまで小説を通じて社会への提言を続けてきた真山仁さんが軽快な筆致でつづるコラムです。毎回さまざまな問題に斬り込み、今を生き抜くヒントを紹介します。アーカイブはこちら

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