海外情勢

カンボジアでコロナ陽性者急増 隔離中の中国人旅行客外出が発端

 カンボジアで、これまでほとんどなかった新型コロナウイルスの市中感染による陽性者が急増している。保健省によると3月4日までに全国で累計425人に上り、国外から入国する際の検査で陽性と診断された人数は417人を超えた。外国人の感染が多く、カンボジア政府は隔離など防疫措置に違反した外国人に対し、強制帰国や再入国禁止を含む厳しい姿勢をみせている。

 カンボジアでは2020年1月末に初めての新型コロナ感染者が確認されたが、それ以来、同11月まで市中感染は発生しておらず、全ての陽性者が外国人、外国由来またはその濃厚接触者だった。同月にはプノンペンで2件の市中感染が発生したが、最大でも41人の感染確認でとどまり、1カ月ほどで収束した。

 南部の町にも飛び火

 ところが今年2月20日、プノンペンで帰国しようとした中国人の陽性が判明。彼らがカンボジア到着時の14日間の隔離措置に違反して外出し、クラブやサービスアパートを転々としていたことが分かり、騒ぎとなった。カンボジアでは入国時に、全員が政府指定のホテルなどに強制隔離される。指定のホテルは厳しく監視され、建物の外はもちろん、ホテルによっては部屋から出ることさえ許可されていない。市中感染のきっかけとなった中国人旅行者は、隔離ホテルの警備員にお金を渡して抜け出していたという。

 カンボジア政府は今回の市中感染を「2・20事案」と呼び、陽性診断された中国人旅行客の足取りを徹底的にたどった。立ち寄り先の関係者には新型コロナの検査を実施し、陽性者が確認された店舗や建物はすぐに封鎖した。その結果、数日後にはプノンペン都内で70カ所以上の店舗やサービスアパートが完全に封鎖される事態となった。

 「2・20事案」は中国人旅行者の多い南部の町、シアヌークビルにも飛び火した。プノンペンで感染したとみられる人たちからさらに現地でも広がり、3月5日現在でその数は80人になっている。また、シアヌークビルでもホテルなどの封鎖が相次ぎ、同4日にはプレアシアヌーク州が事実上のロックダウン(都市封鎖)を宣言。物資輸送のトラックと、救急車など緊急車両以外はシアヌークビルへの出入りを禁止した。また、タイ国境のコッコン州では、プノンペンの隔離アパートから無断で抜け出した中国人旅行者のグループが州境の検問で発見、逮捕される事件も起きた。

 発生のきっかけだけでなく、日々発表される感染者の半数あるいは半数以上が中国人であることから、中国人に対する反感が高まることを懸念し、カンボジアのフン・セン首相は「国籍により差別をしないように」と呼びかけている。一方でカンボジア政府は、「2・20事案」のきっかけが強制隔離を「賄賂」で抜け出したことや、その後も隔離措置に従わない人たちが出たことから、政府の防疫対策に従わない外国人を強制退去させ、その後も再入国を禁止すると発表した。

 予防の新法案提出

 さらに外国人だけでなく、カンボジア国民や滞在する人たち全てに適用される「新型コロナ感染予防法案」を起草し、閣僚会議で承認された。国民議会と上院での審議を経て施行される見込みだ。

 報道によると法案は、「人々の生命、公衆衛生と社会秩序を守り、およびカンボジアの社会や経済に対する感染症の衝撃をできるだけ小さくすること」を目的とする。保健省が示している手洗いやマスク着用、ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保、隔離指示に従うことが義務付けられ、従わない場合は罰則が科せられる。例えば、感染していないが隔離を指示された人が隔離場所から逃げた場合は9カ月~3年の禁錮および500~1250ドル(約5万4300~13万5700円)の罰金。また、感染者が逃げた場合には、最長10年の禁錮および2500ドルの罰金などとなっている。

 カンボジアは世界的にも新型コロナ感染者が少ない国として注目されていた。現在でも感染者数そのものは他国に比べれば多いとはいえない。ただ、カンボジア国内の保健医療態勢は脆弱(ぜいじゃく)であり、単に数字が低いというだけで安全な国とはいえない。

 カンボジアでは、中国やインドから寄贈された新型コロナワクチンの接種が始まっている。医療関係者や国防関係者などが優先され、3月上旬までに全国で12万人超が接種を受けた。政府は国際的なワクチン購入のプラットフォーム「COVAX(コバックス)」を利用するなどしてさらなるワクチンの調達に取り組んでいる。(カンボジア邦字誌「プノン」編集長 木村文)

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