海外情勢

インドネシアで少子化政策、国民理解に苦心 人口過多リスク軽減

 世界的な人口の高齢化に伴い、アジア各国が多様なインセンティブを駆使して人口増加を目指す中、インドネシア政府は生まれてくる子供の数を減らす方針に国民の理解を得ることに四苦八苦している。

 ユリア・プルナマサリさんは2018年に結婚し、すぐに妊娠した。だが、育児にかかる時間と費用について知り、2人目の子供を持つことは、貯蓄が増えるまで数年遅らせることにしたという。29歳で仕事を持つユリアさんは「子供には最大限の世話をし、教育を受けさせたい。私は例外で、計画的に子供をつくることや避妊具を定期的に使うことはせず、意図せず妊娠すれば恵まれていると考えるのが一般的だ」と話す。

 雇用機会など増加へ

 インドネシアの人口は約2億7000万人で世界第4位。25年までに出生率を、人口の増加が実質的に横ばいになるとされる2.1人にまで下げることを目標に、晩婚化や家族計画、避妊を1月後半から促進している。これにより、雇用機会の減少や、行政サービスへの負担など、人口過多に起因する懸念を軽減したい考えだ。

 国家家族計画・人口局のハスト長官は「人口増加を緩やかにするだけの数十年来の対策と異なり、健康や教育、雇用などの向上を同時に狙う。現在インドネシアは労働人口の多さが経済成長に有利に働く『人口ボーナス』期にあり、人的資源の質と生産性を向上させる必要がある。人口ボーナスは、活用しなければ発展のための資本ではなく発展の重しになる」と話す。

 ただ、こうした方針は、新興市場の中でも特に若年層の厚い人口構成と安価な労働力で投資を引き寄せてきた同国にとり危険な賭けともみえる。経済発展の視点からも「収入の増加に伴い人口過多は解消する傾向があり、積極的な対策は必要ない」と多くのエコノミストが忠告する。

 英金融大手スタンダードチャータードは19年に、購買力平価と名目国内総生産(GDP)を基に「インドネシアはドイツ、日本、ロシア、ブラジルを抜き30年までに経済規模で世界第5位内に入る」と予測したが、インドネシアの新たな人口戦略は、同国の成長モデルを根底から覆すものだ。

 さらに、急激な高齢化が懸念されるタイやシンガポールなど近隣諸国が講じる政策とは逆に、人口減少に向け国民に行動の変容を求める中、高所得経済に順応するための痛みも生じている。

 インドネシア大学人口問題研究所のチュロウ・ウォンガカレン所長は「新型コロナウイルスの影響を排除しても、年間約250万人が新規に労働市場に加わり、雇用情勢は厳しい。国民の健康、教育、職について政策が奏功しなければ、人口ボーナスは容易に人口災難に転落する」と指摘。昨年インドネシアは高中所得国に昇格したものの、経済協力開発機構(OECD)加盟国との比較では、医療費や若者の雇用、高等教育を受けた人口、平均寿命などさまざまな発展を示す指標で後れを取っている。

 デジタル加速に評価

 一方で政府の少子化や、デジタル化に対応可能な労働力育成の方針は、アナリストや投資家から高い評価を受けている。

 調査会社オックスフォード・ビジネス・グループのパトリック・クーク氏は「人的資源開発の取り組みは、電気自動車(EV)などの産業バリューチェーンで力をつける戦略と連動するものであるうえ、東南アジア諸国連合(ASEAN)で最大のインドネシアのデジタル経済の成長を加速する。投資を引き付けるのは、人口が絶えず増加するインドネシアではなく富の増大や技術水準の向上がみられるインドネシアだ」と指摘した。(ブルームバーグ Claire Jiao、Grace Sihombing)

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