海外情勢

ペルー急進左派、政権移行へ準備 ケイコ氏は法廷闘争の構え

 【ニューヨーク=平田雄介】6日実施の南米ペルー大統領選の決選投票で、リードする急進左派、ペドロ・カスティジョ氏(51)は10日、不正を訴える中道右派のケイコ・フジモリ氏(46)をよそに政権移行の準備を進めた。ケイコ氏は法廷闘争も辞さない構えをみせており、その背景には、左派政権誕生への警戒に加え、落選すれば訴追中の資金洗浄などの罪で収監される恐れがあるからだとの指摘がある。

 ケイコ氏を取り巻く状況は厳しい。開票作業は既に終了。疑問票の精査や、ケイコ氏側が無効を訴える一部地方票の審査でカスティジョ氏を上回るのは難しいとの見方がある。さらに、選挙戦を支えた財界の“ケイコ氏離れ”も進んだ。

 米外交誌フォーリン・ポリシーは10日のニュースレターで、カスティジョ氏が財界の有力者と会談したと伝えた。同氏が持論の企業国有化など統制色の強い経済政策を軟化させたことで、話し合いの余地ができたとみられている。同氏は政権移行へ経済対策チームの編成も本格化させた。

 経済顧問に就いたペルーカトリック大のペドロ・フランキー教授は「われわれは経済への大規模な介入を考えていない」とロイター通信に語り、経済界が不安視する財産の没収や為替管理、価格統制を否定した。

 新型コロナウイルス危機で打撃を受けた貧困層を支えるとしてカスティジョ氏が訴えた、医療福祉と教育の拡充の財源は「増税と脱税の摘発」を通じて捻出する考えを示した。

 カスティジョ氏は9日夜、「民主主義と現行憲法を尊重し財政的にも経済的にも安定した政権をつくる」と表明。憲法改正による経済統制の強化を取り下げた。今後は10党が分立する国会(一院制、定数130)での多数派工作に乗り出すとみられる。

 7月28日の大統領就任式へ向け政治基盤を固めるカスティジョ氏に対し、ケイコ氏は左派政権による「共産主義化」への懸念を改めて表明し、「民主主義のために戦う」と訴える。

 カスティジョ氏を擁立したペルー・リブレ党はマルクス主義を掲げ、党首のブラジミール・セロン氏は独裁者と批判された反米左翼ベネズエラの故チャベス大統領に傾倒。経済政策で態度を顕著に変化させたカスティジョ氏も、同国やキューバなど中南米の左派政権への共感は示したまま。ケイコ氏に呼応する支持者の抗議が首都リマで続く。

 ただ、ケイコ氏の抵抗は過去の大統領選での不正献金にからむ資金洗浄などの罪での収監を逃れるためだとの見方もある。大統領になれば任期中の訴追手続きは凍結されるからだ。検察側は10日、同氏の予防的収監を裁判所に請求した。

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